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CROSS 第18話 『Embassy』

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第4章 役得と特権



 翌日の昼になって、山口は目を覚ました。お腹が減っていた彼は、
大使館の食堂に向かった。


 山口が食堂で昼飯を食べていると、食堂の大型テレビで、地元
テレビによるニュースが流れていた。内容は、今度行なわれる、
このプラントとプラント理事国との会議についてだった。
 その次のニュースは、クライン議長の邸宅に何者かが侵入したとい
うもので、その「何者」である山口は、正体がバレていないかヒヤヒヤ
していた。もしバレても、外交特権があるのでまず逮捕されないが、
『ペルソナ・ノン・グラータ』(「好ましくない人物」という意味。)を喰らって、国外退去させられるかもしれない……。
 幸い、覆面をしていたので、正体がバレてはいなかった。

「山口准佐!」

突然、自分のことを呼ばれたことに、山口はビックリした。呼んだ
のは、あの気絶させられた警備兵だった……。
「な…なんだ?」
「会計が呼んでいます」
「?」


 食事を終えた山口は、会計の元に行った。会計である初老の男は、
山口が目の前に来ると、仕事の手を止め、
「はいよ、今月分」
そう言って、封筒を山口に渡し、自分の仕事に戻った。山口が封筒の中を見てみると、札束が一つ入っていた。札束は、プラントで使われている紙幣だった。
 今日は給料日でもないし、給料や手当は銀行振り込みのはずだ。山口は頭をひねり、
「口座番号が間違っていて、振り込めなかったんですか?」
会計には嫌われたくないらしく、少し丁寧な口調でそう尋ねた。
「いいや」
経理は仕事をしながら言った。
「じゃあ、この現金は?」
山口は、なにがなんだかわからないという感じで言った。経理は
ため息をつくと、山口の顔を見た。そして、めんどくさそうな口調で、
「あんた、在外公館勤めは初めてかい?」
そう聞いてきた。
「ええ、そうです」
「それは『外交機密費』ってやつだよ。好きに使いな」
山口は、経理の言ったことに驚いた。
「好きに使いなって、何に使ってもいいってことですか?」
「……建て前としちゃあ、ダメだけどね。ある参事官なんざ、この金で、ラクス・クラインのコンサートに行くらしいぞ」
「…………」

 山口は信じられないという顔つきで、部屋に戻った。彼は、この
外交機密費をどう使うかを考えた。そして、すぐに思いついたらし
く、日が沈むと出かけた。