川の先まで
出会ったのは橋の上。
あなたは川の流れを見ながら言った。
いつか、ずっと先を見たいんだ。
同じことを考えてるのだと嬉しくて、それから一緒に
いたけれど。
だんだんとすれ違いが増えてきて、二人でいるのに寂
しさに耐えられなくなった。
このままじゃ、つらいね。
そうだね。
ねえ、旅に出ない? 川のずっと先を見に行こう。
よし、山までひたすら歩いて行こう。
え、だって。ずっと先と言ったら下流でしょ?
川のおしまいの海。
いや、だって。ずっと先と言ったら上流だろ?
川の始まりの山。
「川のずっと先を見たいね」
同じ事を言ってると思ってた。
同じ場所を目指してると思ってた。
そんなにも初めから食い違っていたなんて。
勘違いがおかしくて、おかしくて、笑おうとしたら涙
が出た。
泣いて泣いて、夜通しずっとただ泣き続けた。抱きし
めてくれたあなたのシャツの胸を濡らして。
そして朝になり私達は橋へ向かった。それぞれ目指す
場所へと、旅立つために。
それから。
それから、今も私たちはここにいる。
つまり旅には出なかった。
私の涙が川の始まり。
あなたの胸が川の行き着く場所。
それがわかったから私たちは今も一緒にいる。
そしてきっと、これから、ずっと先まで。
~了~