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タマ与太郎
タマ与太郎
novelistID. 38084
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クラインガルテンに陽は落ちて

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第4章 もうひとつの楽しみ



ゴールデンウィークに入り、テレビでは高速道路の渋滞や行楽地のニュースで持ちきりだ。私はこの休みを利用してトマトの苗とジャガイモの種イモを植えた。もともと渋滞も人ごみも苦手な私にとって、土いじりは無性に楽しい。
作業が一段落し、小休止をしていると「こんにちは」と聞き覚えのある声で挨拶をされた。声の方向に顔を向けると先日のキャップの男性が立っていた。
「こんにちは。腰のお加減は如何ですか?」
「ああ、今はすっかり治りました。お恥ずかしいことで…」男性はキャップを外して軽く会釈した。
私はどちらかといえば人見知りをするタイプだが、この男性とはたった2度目だというのに不思議とスムーズに会話が進んだ。
「この農園は長いのですか?」
「去年の4月から始めたんです」
「そうですか。どんなものを作られたのですか?」
「主にトマトやナス、それに葉ものですね」
「収穫はどうでしたか?」
「はい、八百屋さんが出来るほど」
「ハハハ、それはすごい」
 クラインガルテンに通い始めて1年と1ヵ月が過ぎたが、この間私はこれといって親しい知り合いが出来たわけではなかった。むしろ人とのかかわりを無意識に避けていたかもしれない。土を触っていればそれだけで充分癒されたからだ。ところがこのキャップの男性は少し違った。私の中にごく普通に入ってきたのだ。そして私もそれをごく普通に受け入れた。