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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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破天荒アリス!

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 ――とまあ、そういう理由でアリスは独り図書室で特殊任務を遂行中であった。特殊任務と言っても図書室の本の整理と在庫チェックなのだが、がしかし!! 特殊任務というのにはある理由があったりする。この仕事は特殊任務と呼ばれるような特殊で大変な仕事だったりする。
「本なんか読まないアタシがなんで図書委員なんかやってんだろ?」
 それは彼女が押し付けられたからだ。
 たまたま学校をサボって行かなかった日にクラスで委員決めが行われたらしく、誰もやる人がいなかった図書委員を押し付けられてしまったのだ。
 2学期も、もう終わろうとしているのにアリスは図書委員の仕事をしたのはこれが初めてだった。
 他の1年の図書委員に至っては星川くん以外は今まで一度も仕事をしていないというのだから、この学校の図書委員は人気が薄いことが伺える。図書委員の人気が無いのは”この“図書室にも問題があるのだが……。
 人気が無いのは図書委員だけでもない、図書室もあまり人気がない。――というかこの学校の生徒は本を読む生徒自体が少ない。だが、しかし!!
「図書室の中に入ったのはこれで2度目だけど……あり得ない」
 そう、この学校の図書室の広さと在庫数はアリスの常識外、あり得なかった。そして図書館は中にあらず、外にある。つまり、その大きさが国立図書館以上の大きさを誇ってしまっているこの図書館は学校内ではなく、別館として独立した建物として建てられていた。そして、この図書館は24時間運営で一般の方々にも解放されて、職員も雇われ――もはやこれを学校の図書室と言っていいものか?
 今日は在庫のチェックをするために閉館され、人は誰一人いない。けれど普段は地域住民の方々にはご愛用されている。だがなぜこんな図書室を学校が建設したのかは不明だ。謎の学園長の単なる趣味で作ったとの噂もあるが、真意は定かではない。なんせ謎だから。
 腕組みをし、足を肩幅よりも大きく広げ本棚を睨みつけるアリス。
「こんなの独りじゃ無理に決まってんでしょ!」
 こんな仕事を押し付けやがって、ベルバラのヤロウただじゃおかねぇぞ。あたしが怒ると恐いのよ、でもねあんたほうがよっぽど恐い。仁王立ちをするアリスの表情はそんな感じだった。
「どっから手をつけていいのかわかりゃしないじゃないの!」
 在庫チェックをしろだと? そのチェックの仕方ぐらい教えていけよセクハラ教師。とアリスがそう思っているかはわからないが、彼女は近くにあった本棚を思いっきし蹴飛ばした。
 このキックはちまたでも有名な『アリスの左だ』!! 何で有名かというと、アリスは昔から頭に”チョー“が付く美少女としてちまたでも有名で男の子の人気ははなまる印だった。そのお陰で彼女はよく野郎にナンパされることはしょっちゅうで日頃から困っていた。そして事件はある日の夏の昼下がりに起きた――。
 その日アリスは夏休みを利用して、友人と海に海水浴に来ていた。当然のことながらアリスはそこで下心丸出しの二人組みの男にナンパをされた。
 いつもどおりあっさり断るアリス。そして立ち去ろうとするアリスの腕を男が掴んだ。
「何するの、話して」
 ガンを飛ばして男を睨むアリス。その行為が男たちを逆上させた。咆える若い狼。
「んだよテメェ! このメスブタ!!」
 これは決して言ってはいけない一言だった。
 次の瞬間アリスの左足が男たちの股間に連続ヒット。股間を押え今にも死にそうな顔をしてうずくまる男たち。それを見て楽しそうにあざ笑うアリス。横にいた友人――葵は驚きもせず、うんうんと頷いている。この葵はアリスのことを昔から良く知っている幼稚園からの幼馴染で、アリスの凶暴性についても熟知していた。アリスは幼稚園のころから男の子を力ずくで従わせていたのだ。
 何も言わず立ち去ろうとしたアリスたちに男たちが狂った獣ように襲いかかった。砂浜が赤く染まった。やられたのはもちろん……。
 見るも無残なほどにボコボコにされた男たち。それを見ていた周りのギャラリーたちはアリスから円状に距離を作り、男たちは何故か全員股間を押え蒼ざめ、子供づれの母親は子供を強引に引っ張りどこかに消えた。真夏の白昼夢。悪夢だった。
 この話は今もなお某海水浴場に伝説として語り継がれている。がアリスの名前はその話には出てこない。なぜなら謎の権力が働き事件は見事に改ざんされたらしいからだ。
 警察沙汰にはならなかったが、アリスがこの事件に関わっていたのではないかという噂があっという間に広がり、『アリスの左』はちまたで有名になってしまった。
 ちなみに謎の権力とはいったい何なのか気になると思うが、言ってしまったら謎ではなくなるのであえて言わないでおこう。
 蹴飛ばされた本棚はグラグラと揺れに間にも倒れそうだった。
「まさかね……」
 人間以外に思ったことが現実になってしまうことが多い。アリスの予感は的中した。
「きゃあーっ!!」
 本棚が大きな壁となり、あられもない声をあげたアリスに襲い掛かる。まさにアリスピンチ!!
 と言ってるヒマもなくアリスは本棚の下敷きになってしまった。アリスは無事なのか!!

 ――まぶたの上に温かい光を感じた。
「あと5分、5分したら起きるから……」
 腕を伸ばしながら、
「ううん……」
と アリス色っぽい声を甘い吐息とともに出した。そしてふと何かに気付いたようにバッと目を覚ます。
 ――数秒の間を置いて彼女は叫んだ。
「ここどこよ!!」
 辺りは新緑の森に包まれ、歌うような小鳥のさえずりが聴こえ、風に揺れ音を立てる木々の間から差し込む木漏れ日。アリスがどこだというのも無理もなかった。
 起きたら突然森の中、果たしてここはどこなのか……?