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我的愛人  ~顕㺭和婉容~

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「宣統帝と皇后陛下には満洲国の執政閣下とその令夫人となって頂くことになるでしょう」
 満洲国・新京・執政閣下──。
 初めて聞く言葉の羅列に婉容は戸惑いを隠せない。彼女の笑顔は瞬く間に萎んでしまった。
「漢・満・蒙・日・朝の五族協和、王道楽土を理念とした新しい国家の建設。その頂点に立つことを宣統帝は既に了承済みです」

 ──ああ、またもそうなのだ。
 婉容は心の奥底で絶望にも似た深いため息をついた。
 運命は自分を、その希望とは真逆の方へと否応なく押し流してゆく。今となっては虚しい、名ばかりの清朝皇后とてなりたくてなったわけではない。ましてや得体の知れない『執政』夫人などもってのほか。
「執政夫人となれば、皇后陛下の未来は思うがまま。今までのような隠れた軟禁生活を送らずとも、我等が祖先の約束の地、この満洲で新しい希望に満ち溢れた国家を、清王朝を復活させるのです」
「我等が祖先の約束の地」
 璧輝の発したこの一言を婉容は聞き逃さなかった。
「金璧輝、貴方は一体何者なの? あのアマカスは確か貴方をカワシマと呼んでいたわね? 貴方は本当に中国人? 漢人なの? ここ満洲は私達満洲族の故郷なのよ……」
 大きな黒耀の双瞳がじろりと璧輝を見据えた。