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il neige ~白雪の杜に~

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最初に見たのは5年前の冬。


あの時はすっかり遊び疲れて忘れてた。
山の天気は変わりやすいって・・・。


ちょっとした吹雪の中に、ぽつんと一人で崖の下。

まさか缶蹴りの途中に帰れなくなるなんて思わなくってさ
もちろん親には言ってないし、友達も先に帰っちゃったと思ってるハズ。
第一、小学六年生にもなって「暇だから缶蹴り」だなんて今思えば馬鹿だなって思う。
いや、山の麓でする方がよっぽど馬鹿だな。
取り敢えず僕は馬鹿だった。


まあ、足が痛くて今はあんまり動けなかったし
落ちた場所のすぐ近くによさげな穴があったから
しばらくそこで助けを待とうって、体を丸めて蹲ってた。

最悪吹雪さえ止んでくれたら自力で何とかできそうだったし。


でもさ、吹雪はどんどん強くなってきたんだ。
ここにいたら凍死するんじゃないか、なんて思えた。
っても出たところで早死にするだけだし・・・
うう、暑いからって上着脱ぎ散らかすんじゃなかった。

なんて後悔してるときだった。


「あづッ!!」


穴の入り口あたりから声がした。
声って言うか悲鳴?
そんときは意識が朦朧としててさ
風の音かなんかを聞き間違えたんだろうって
思ってたけど、どうも違ったみたい。

音がしたところまで這ってみると
なんと脱ぎ散らかしたハズの僕の上着が
ご丁寧にたたんで置いてあったんだ!

しかも何故か使い捨てカイロが辺り一面にばらまかれていて
奇っ怪ながらもありがたく使わせてもらった。

あと、たたんだ上着の上に木の実も置いてあったから
おなかすいてたし夢中で食べちゃった。おいしいです。


ん?もちろん見たよ?
はじめに言ったじゃん!
「最初に見たのは5年前の冬」って

せっせとカイロ集めてる時に見たんだ。
ちょっと遠くに、雪と解け合う色の髪をした白い衣の女の人。


すぐ、見えなくなっちゃったけどね。
作品名:il neige ~白雪の杜に~ 作家名:ミエル