二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

きみとおとなり(1)

INDEX|11ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

どっじぼーるくらいしす



「じゅーんー!がっこーいこー!」
 玄関の方から駆ける足音が聞こえた。今日から夏休みが終わって学校だ、達哉はお母さんから淳も一緒の学校に通うことになるときいていた。だから、今日から一緒に登校することに決まっていた。これからずっと淳と一緒かと思うと達哉はなんだかワクワクしていた。橿原宅の2階の窓がガラっと開くと、淳が手を振った。
「うん!いま行くー!」
 黒いランドセルを背負った淳が玄関から出てくる。足はもう治ったようで、元気に走って出てきた。達哉は淳の手をギュッと握る。淳も握られた手を握り返してくれる。でももう達哉は淳を引っ張らない。同じ速度で並んで歩く。若干達哉のほうが早いから、淳が軽く早足をする。
「そういえば淳ってどこのクラスになったの?」
「んっと…2年1組だったと思う」
「おっ!やった!オレといっしょじゃん!」
 達哉は手を離すと、ぐいっと淳の首に腕を回して引き寄せる。淳が苦しそうにぺちぺち腕を叩くと、腕を離してやる。そしてまた、手はお互いに握り合うとブンブン宙に振った。
「えっほんとう?じゃあぼくさみしくないね!」
「うん!いっぱい遊ぼうなー!」

 淳が職員室に用事があるというので、一緒についていく。
「お、周防が一緒に来たのか」
 職員室に二人ではいると、すぐに先生に声をかけられる。さっぱりした性格の女の先生で、とても優しい先生だ。
「橿原です!」
「さっき樫原くんのお父さんから電話があった、事情は聞いているよ。パパもママもお仕事が忙しくて休めないんだってね…」
 ランドセルから書類を取り出すと、先生に渡す淳。
「ぼく、何回も転校してるし、こういうのなれてます」
「そうか…橿原はえらいな…周防は先に教室に行ってなよ、それとも橿原が心配?」
「べ、別にそんなんじゃないけど…」
 淳がニコっと笑う。きっと心配要らないよってことなんだろう。淳は達哉よりもしっかりしてるから、大丈夫なのはわかってる。ただ、淳がいう感じでは本当は転校初日にはお父さんかお母さんの同伴が当たり前なのだろう。淳の孤独を感じ取ってしまっては放置することはしたくない…。
「大丈夫さ周防、橿原は少なくともあんたよりしっかりしてるよ…ほら、そんな顔してないで教室いってな…」
 先生も笑って達哉を見る。なんだか恥ずかしくなってきてプイッと出入り口のほうを向くと、廊下へ出て行く。

「おはよー!」
「おはよう…」
「周防ー!何むくれてんだよー!ひさしぶりだろー!」
 さっそくいつもの友達が達哉に絡んでくる。が、いつもなら元気に返してくる達哉も淳が気になってそれどころじゃないのだ。
「どこいってきたー?」
「おれは沖縄行って来たー!」
 あちこちからいろんなおしゃべりが聞こえてくるものの、以前のようにあまり興味を持って聞けなかった。
「気持ちわりぃー!周防がおとなしいー!」

 チャイムがなり、先生が入ってくる。その隣には淳がいた。
「転校生だー!」
 一気に教室がざわついた。そりゃあ淳は可愛いもんな!なんて思ってなぜか達哉が得意になってしまった。淳と目が合うと微笑を返してくれた。
「はい、静かにねー!2学期から新しく転校してきた橿原淳くんだよ」
 先生の声で皆が静まった。
「橿原淳といいます。よろしくおねがいします!」
 そういってペコリとお辞儀すると、また周りがざわつきだした。
「じゅん~?余計わからなくなっちゃった、男子?女子?」
 その会話に達哉はピクリと反応した。今こんな会話を聞くまであまり意識してこなかったが、確かに淳は可愛い。そして、男にも女にも見える…と言われれば見えなくも無いような容貌をしている。でも達哉にとっては最初から男だったし、かけがえの無い友人になった淳に対してそういう思いを抱くことはおかしいように思えたから、皆の反応が意外で仕方が無いのだ。
「ばかだなー淳はどうみても男だろ?」
 なぜかムっとして達哉が男子か女子か気にしていた女の子に声をかけた。
「うーん、でも樫原くんかわいいよ?」
 まったくの悪気の無い表情。
「かわいいかもしれないけど淳は男だって!」
「なによー周防くん怒んないでよー」
「こらこら、皆静かに!席だけど、とりあえず周防の隣に座ってもらうから」
「…えっ!?」
 達哉が固まる。こんなに都合がよくていいのだろうか?隣の席だった女子が先生の指示に従って移動していく。淳が席に着くと、ちょっと悲しそうに笑う。
「ぼくの事情話したら…達哉の傍そばにいたほうがいいねって言ってくれたの…先生…」
 そのときの達哉にはまだ、淳の言う事情というものがよくわからなかった。

だけど、休み時間に事件が起こる。それがきっと…淳の言う事情だったんだろう。

 休み時間になると、淳の周りに女子が集まってキャッキャ騒いでいた。達哉は淳から離れたくないし、立ち上がろうにも女子に囲まれて動けない。顎に手をつきながら興味なさそうに会話を聞く。どこからきたのーやら好きなものは何~とか。淳の趣味は読書に花占い、星の観察…どれもこれも女の子が喜びそうな趣味。淳がそれを上げるたびに周りの女子がキャーキャー騒ぐ。
 そのときだった。クラスの中で一番偉そうな男子が女子の垣根の向こうから声をかけてきた。
「おーい周防!ドッジボールいこうぜー!そんな女ばっかのとこいると腐るぞー!」
「なによー!腐るってなによー!!」
 女子達が一致団結して怒り出す。
「ん、オレドッジボール行こうかな…淳も行くよな?」
 耳がキンキンしてきた達哉は淳の手を握って立ち上がろうとすると、淳が申し訳なさそうに手を離した。
「ご、ごめん…ぼく…ドッジボールとか苦手で…」
 淳は震えていた。
「そうよ、周防くんいけばいいじゃん!」
 立ち上がった達哉を押しのけて、女子が淳の隣に座る。ちょっとムっとしたが男なのでガマンする。
「ハハハ!ドッジボールが苦手で花とか星とか!橿原って本当は女じゃねーの?似合ってるよ!」
「ち…違うもん…」
 淳が小さい声で呟いた。女子もその様子を見て何か思うところがあったようだ。
「なによ!力ばっかで頭わるいやつに言われたくないわよー!」
「あぁん?女子のくせにやろうってのかー?」
「へぇ~?女の子に暴力ふるうんだー!」
 女子と男子が険悪になってくる。達哉は呆れてそれを見ていたが、間に挟まれた淳がかわいそうだった。
「なー…女あいてに殴るのやっぱよくねーよ!ドッジボールしようぜ…」
 一人の男子がさすがに拳を振るうわけにはいかないので提案をした。
「じゃあ男子チームと女子チームな!」
「じゃあ、勝ったら橿原くんいじめないって約束する?」
「お、おう…そんかわり勝ったら1週間放課後の掃除、女子がしろよな!」
「いいわよ!のってやろうじゃん!」
 盛り上がる女子と男子の間で、淳が一人体を震わせていた。手を握ってやりたかったけど、伸ばした手は人の壁で押し返された。
「でも!男子強いんだからハンデちょうだい!」
「…いいよ…あんまりすごいのなしだからな!」
「周防くんは!私たちのチームに入るの!」
 突然女子に腕をつかまれグイっと引き寄せられて達哉はふらついた。
「…は、ハァ?」
「…橿原くんの友達なんでしょ?」
作品名:きみとおとなり(1) 作家名:妄太郎