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メガネ

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おいら、この村で暮らす猫です。
名前はヨネです。オス、10歳です。
ニャー。

最近、村でちょっと変わったことが起きました。
村のみんな、ひとり残さず黒縁メガネをかけるようになっちゃったんです。

はじめは本当に驚きましたよ。

おじいさんやおばあさんから、子どもたちまで。
みんな黒縁メガネをかけるようになりました。

メガネをかけていないのは、まだ幼い子どもたちと僕みたいな動物です。
それと郵便配達員の島田さんです。でも島田さんは隣村のひとです。
ニャー。


いつのまにかメガネの噂は広まっちゃったようで、なんと村にテレビ局の人が来ちゃいました。
村長さん、張り切ってました。
でもバラエティ番組でした。

おいら知ってるんです。

村の約束で、外出するときは必ずメガネをかけなくちゃいけないみたいなんです。
だから村長さんもメガネかけてます。
でもあれ、ウソなんです。
あと、髪の毛もウソなんです。
ニャー。


おいら、聞いちゃったんです。

ウチのよっちゃんが幼稚園に入園する前の日に、お母さんがこんなこと言ってたんです。
「メガネのことは誰にも言っちゃダメだよ」って。
その日から、よっちゃんもお洒落な黒縁メガネをかけるようになりました。
でも、あんまり嬉しそうじゃなかったです。


最近はテレビで知った人たちで村は賑わっています。

いつのまにか「メガネまんじゅう」とか売ってました。
なんだか看板がいっぱいできたような気がします。
良いのか悪いのか、おいらにはぜんぜんわかりませんでした。

ニャー。


村でメガネをかけていないと、噂はすぐに広まります。

このあいだ、お隣のタツジイが散歩してたんですけど、どうやらメガネをかけ忘れてたらしいんです。
神社に集まってたおばあちゃんたちに見られちゃって、急いで村長さんがやってきました。
タツジイ、かわいそうでした。

小さな村では約束を守らないと、すぐに後ろ指さされちゃいます。
でもみんな我慢しているようで、なんだかチグハグ。

村長さんには「お眼鏡」なんて言葉は無関係です。
むしろ「色眼鏡」といったところでしょうか。
あ、ゴメンナサイ。
ニャー。


おばあちゃんたちが普段集まる神社も、いつのまにか目に御利益のある神社になってました。
でも、おばあちゃんメガネかけてます。よくわかりません。


犬のロンちゃんが言ってました。
「みんな浮かれてるワン」

たまに山から顔を出すウリボーの太郎も言ってました。
「どうしちゃったのさ?」

ウグイスのピーちゃんから聞いたんですけど、村の温泉に入るときもメガネを外すひとはいないんですって。
レンズ曇ってたら、山の桜も見えません。
作品名:メガネ 作家名:OBTKN