鷲 と 鷹
「あれは鷲かのぅ? それとも鷹か……」
すぐそばでそれを聞いていた村人の一人が答えた。
「あれはやっぱり鷲でしょう」
すると、もう一人の村人が言った。
「いやいや、あれはやっぱり鷹でしょう」
うーん、と長老は唸り、それからしばし「鷲・鷹」論議が始まった。
「どう見ても、アレは鷲だと思うよ」
「いや、アレは絶対鷹だよ!」
長老も判断がつかずに、二人の言い合いを眺めているしかない。
方や空からその論議を見聞きしていた鳥は、
「どっちでもいいから早く決めてくれないかなぁ」
と、思っていた。
鷲にしては小さく、鷹にしては大きいからだのその鳥は、いつも両方から仲間外れにされて孤独だった。
「ここで結論が出たら、いばってどちらかの仲間になれるんだ」
そう思った鳥は、目を光らせて下を見下ろしていた。
しばらく議論が続き、二人の雰囲気が険悪になりそうになった頃、ようやく長老が口を開いた。
「うん、あれはきっとキジだよ! わっはっは」
一瞬驚きの表情をした村人二人は、しかし即座に長老の言葉の意を汲んで、
「ああ、そうですね。あれはキジですね」と、笑いながら言った。
自分の言った言葉のせいでの、無益な喧嘩を終わらせようとした長老の苦肉の策だったのだが、それを聞いた鳥は、
「えぇーー!? そ、そんなぁ~~」とガッカリした。
それから仕方なくその鳥は、キジの仲間になろうと試みたが、やはりキジには仲間として迎えられることはなかった。
しかしそれからしばらくして、同様な悩みを持つ鳥と出逢い、二羽はつがいとなって終生幸せに暮らしたとさ。