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内裏 蓮(だいり れん)
内裏 蓮(だいり れん)
novelistID. 37648
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北を近代戦争において経験しなかった、その一事に尽きる戦争観が、彼らの限界を無視した

神風魂だったのだろう、それに引き比べて、海軍の幹部になるためには、高等教育=海軍兵

学校を上位成績でクリアすればよかった。海軍の縁故でなくとも受験する習慣があったし、

第一民間人から軍人が成立し得た、そして、幹部になれば海外派兵に伴い留学もままあるこ

とであったし、もともと戦争が好きで好きでたまらないという意識も、あまりなかったとい

える、だが、その中庸(ちゅうよう)さが逆に横車の牛後(ぎゅうご)の尻拭いをせざるを

得ない後棒役を押し付けられるはめになる、しかしその悲運とはいえ、後始末を背負った背

中の正中が、戦後の日本人の心の糧になったのではあるが−−−

2.26事件を善処した直後、クーデターによる広田ひろちか新内閣発足にともない、海軍

大臣はながのおさみに代わる、その永野に命じられ「一系問題」に着手すると同時に横須賀

から海軍軍令部兼海軍省出仕になる、そして一年足らずで軍務局長に転じた(((一系問題

=戦艦内の指揮権を、艦長一系統にするか、機関長と(艦長と)の2系統にするかの研究))

)三国同盟が海軍抜きでしんちょくし、寝耳に水のごとく譲歩を迫られ、ながのおさみは最

後の手段である入閣拒否をせず、締結の段になる、

しかし、井上にとっては日独伊同盟は、自動的対米およびに対ソ宣戦になるということ以外

の何者でもなかった、

2.26から0日後、病気だった娘静子が軍医の元へ嫁ぐ、結納の日、酒も半ばに部下の手

も借りずに静子の静養のために不便をかえって求めて住んだ0のやまがの自宅に帰ると、亡

きキクヨに報告をし、さみしさをこらえて一やを明かしたという−−−しげよし5×歳、×

(季節)−−−



嵐の前の静けさといおうか、

それとも奇襲成功のあおりの境地か、不気味な映り込みの写真

鏡の中の熱を持たないような陽光が、沈黙としてあった、

先勝ムード、

だが井上、山本、米内ら3人にとっては、大きく膨らみすぎた泡に、乾いた指を突きつけら

れているような気がしていた、2年、山本五十六は、その期限で戦争を終結させなければ、

負けだとかねてから上奏してあった−−−

日独伊三国同盟締結直後、井上は海軍航空本部長に転任する、

かねてから航空兵力、特に「空の連合艦隊」の実現を海軍首脳は唱えていた、井上はそのき

ねづかをとることを意識している。もはや仮想敵国ではないアメリカイギリスの航空兵力は、

日本の100倍ともいわれていることを井上は知っていた−−−

ここにもう一つの現実がある、日本はアメリカに資源を供給されていたのであるが、三国同

盟と同時にそれがストップした(日米通商条約破棄)、無論中国、そしてのちには進出先のイ

ンドネシアあたりでもある程度は供給の回復できる資源があったが、

日独伊三国同盟の一番のデメリットは、鉄と石油の輸入が暫定的にとはいえなくなることだ

った、陸軍の独断で成立したこの同盟は、資源に関して、あるいは戦闘に関してさえ、具体的

な効力はなかった、ただの政治的約束であり空手形といってもいいくらいの、差別意識の強い

もので、お仕着せにすぎないものを、天皇制陸軍はもろ手で歓迎していたのである。山本五十

六海軍長官が締結決議の席で資源について詰め寄ったが、子どものいじめよろしく陸軍大臣は

無視聞かぬ振りをしたという、ほとんど幼稚園の取り合いのように、われわれの戦争は遂行さ

れていたといえる、無論そうでなければ戦争の始まりかたが違っていたのかもしれないが、夜

警国家というものは、野球寮(あるいは昔でいえば学生寮そのもの)や刑務所に似ている、

といえば天皇制はそのさいたるもので、若者言葉を使う目先にとらわれた全体を国家からして

先導していたといえるのではないか、という理解の仕方がある、無論軍人であったものは後ろ

から弾が飛んでくるという現実を知っていたし、海軍が戦争を止めてくれると希望を持ってい

たものも大勢いる、

しかし、人間は生まれながらにダウトゲームをしている、それにがんじがらめにされれば、

神風特攻だろうとなんだろうと正しいようにおもえてくる。武器とおさらばできない知恵の輪、

はずそうと思えば思うほど食い込んでくる、手錠は、見れば先に心にはまる−−−

/





「親もなければ妻もない、いるといえばまだ8にもならない娘が一人きりだ、おもいのこしな

く体を張れるよ」かつて毎日新聞にそう言っていた彼が静子の結婚に際し

「これで本当に一人だ、何のごこもない本当のご奉公ができるよ」

そう応じた、

だがそのとおりにはならなかった、彼をしてこの覚悟は、最後まで自分の足で立つためのいち

あくの砂、人が艱難しうる最大の不幸の呼び水とはいえ、誰もいい得ない証明の、その写しな

のだろう、彼は戦後マスコミを遮断した、プリズナーとして服役後、何者にも帰らないと誓っ

た、結局、戦争の加害者が一番の被害者として、名を残すことは誰も求めてはならないデッド

エンドだからだ、彼は旅立っていく−−−戦場へ−−−