水世界
呼ぶ声
僕を呼ぶ声がするよ
きっと
どこか遠く
山の向こう
空の果て
宇宙の彼方
心の底から
そっと
静かに呼びかけるよ
その声は悲しくて
寂しくて
けれど、恋しい
叫びだしたくなるんだ
僕は僕になりたかった
僕は僕に還りたい
けれど、もう、なにもかもあやふやで
魂の熱を思い出せないんだ
僕を呼ぶ声
静かな波紋
心に響いて また 消える
僕はどこへゆくのだろう
どこへ消えてしまったのだろう
生まれたその時からきっと
僕は僕になれずに
ただ、胸をかきむしるような冷たい熱の苦しみだけにうなされていた
生まれおちたのに
僕はいない
涙だけがただ、命だった
声は遠い
けれど
そっと
心
響いている