水世界
さぁ、さぁ
さて、思うに空は青いのだ
そして、雲は白いのさ
涙は透明で
どこまでも
こぼれおちてゆく
透きとおっているのだ
いやになるのさ
綺麗で、綺麗で、馬鹿らしい
やっぱり泣きたくなるんだよ
綺麗は悲しい
悲しいものを綺麗って呼ぶんでしょう
風
さぁ、さぁ、さぁ
緑の匂いを染みつかせて吹き抜けてゆく
体も心も通り抜けて空っぽ
澄み渡る
消えてゆけるような気がする
錯覚でも
幻でも
五月(さつき)の雨まじりの風の匂いは
心を澄みゆかせる
そして、やはり見上げた空は灰色で、
けれど、その向こうの空はやはり青いのだ
うんざりするよ
うんざりして
逃げ出したいよ
逃げても、逃げても、逃げられない
宵闇の月のよう
どこまでも追いかけてくる
そのまま光の中の空は灰色でも、青色でも、
青い
蒼い
碧い
あおい
私は奪われてゆくのだ
溶けて、唯一残るのは涙だ、それが人の証か
はあ、何もわからぬまま、吐息
風はうすい緑色をしている
緑の風にのって、心ごと吹き飛んでゆけたならいい
地上にしか生きられない哀れな人となった私は
それでも地上を愛し、空に焦がれ、風を夢見た
命を欲した
耳の奥 さぁ、さぁ、と音がする
それは濃い海のさざ波のような音色
雨のうたう声のような音
そして、風の澄み渡るざわめき
囁いているのだろうか
叫んでいるのだろうか
私はどこかへ還りたい
けれどどこへも還れない
そして、また吐息
ため息か息吹か…
くうきにとけた
ふ
青
さぁ さぁ さぁ