水世界
黒と動物
悲しみを食べ尽くして
胃がいっぱいになって
それでも、あふれてくる悲しみ
ひとり立ちつくした夜空
叫んでも 遠く 闇に吸い込まれて消えてしまう
あー あー あー
わー わー わー
うー うー うー
言葉にならない叫び 原初の動物
私は動物
きっと
足元はざらついて冷たい
素足の皮膚
この感触は私が生きている証なのだろうか
じく じく 痛む
野性を忘れた私は
ただぬくもりのもとにいたいと願った
獲物を食らうことも
噛みつくことも
生きることも
忘れそうだ
ぼんやりとすべてがぼやけてあいまいで
光る星も私の衰えた眼(まなこ)では見えない
夜の闇は果てしなくて
いっそ飲み込まれたいと思った
黒い夜
黒だけがからっぽの色なのかもしれない
心に似つかわしい無の色なのかもしれない
無であり無限の色
(終わりはない、けれど、はじめから終わっている)
きっと
黒い夜空が欲しいと思った
悲しみを食べて食べてまだ食べ続けるこの体に
夜の闇を食べてしまいたいと思った
私が食べられてしまうなら
それでいいと思った