~双晶麗月~ 【その5】完
◆Epilogue(エピローグ)◆
あれから何日経っただろう。すでに夏休みも終わり、2学期が始まっていた。
海を見ながら下る坂道は、所々赤く染める街路樹が並ぶ。
「よぅ!」
いつものように後ろから雄吾が声をかけてくる。
「おはよ。今日も元気そうだね」
「おぅっ!あったりめぇだ。お前もいい加減元気になれって!」
そう言って雄吾は私の頭をポンと叩く。
ミシェルが施してくれた術のおかげで、雄吾は傷もすぐに消えた。今までの記憶を消すとも言われたが、雄吾が断固拒否してくれたおかげ…というのか、私たちはあの時のことを今も忘れずにいる。
それでも私たちはいつも通りに学校に通う。そして私はいつも通りの海を、教室の窓から眺める。
「今頃どうしてるんだろうなぁ…」
そう言ってため息ばかり出る。
「お前なァ、元気でいるに決まってんだろ?アイツがどうにかなってるとでも思ってんのかァ?」
「そんなのわかんないじゃん」
「なんかありゃ絶対連絡来るだろ?」
「どうやってだよ」
「そりゃぁ〜まぁ〜『ちちんぷいぷい』でだろ?ハハッ」
「そんなのあるわけないじゃん」
私はミシェルから最後にもらった小瓶と黒い羽根を、そのままの状態で持っている。
これを融合させてしまったらどうなるのか……
「あん?何持ってんだ?」
雄吾はすかさず私から取り上げた。
「ばか!何すんだよ!」
私は慌てて取り返す。
「ははぁ〜ん、それフヴェルの水じゃねぇの〜?」
「え…!そうなの?」
「あぁ。だってオレも飲んだもん」
「えぇっ!飲んだっけ?で、どうなったんだよ?旨いの?まずいの?」
「ん〜…まぁフツーの水だな、こりゃ」
「なんだよ?ビビらせんなって」
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈