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なにサマ?オレ様☆ 司佐さまッ!

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「かしこまりました」
「奥の部屋は司佐の部屋だが、今は世話係でもないから近付かないで。何かあったら隣の部屋が僕の部屋だし、電話の内線で、辻さんやメイドの控室にも繋がる。内線番号は電話の横に。何かわからないことは?」
「……いっぱいあると思いますが、その都度質問させてもらいます」
「よし。じゃあ、今日はゆっくり休んで。出てきたばかりなのに、勉強だのなんだので大変だっただろう」
「いえ……夢みたいです。こんな素敵な一人部屋を頂いて、学校にまで……」
「だったら、まずは入学目指して頑張れよ。司佐は気まぐれだし、気が変わらないうちに入学しないと」
「はい。頑張ります」
 泣きながらも闘志を燃やすコトハに、昭人は笑いながら頷く。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい、昭人」
 コトハの言葉を背中で受けて、昭人はコトハの部屋を出ていく。そしてそのまま、司佐の部屋を訪れた。

「ああ、昭人。どう? コトハの様子は」
 長椅子に座って本を読んでいた司佐は、軽くそう尋ねる。
「感動してまだ泣いてたよ」
「そう」
「どういうつもり? 気まぐれにもほどがある」
「なに怒ってんだよ」
 ムッとした様子の昭人に、司佐は本を閉じてそう言った。
「怒ってないけど……あの子の人生はすでに決められていたし、それを受け入れてた。それなのに学校へ通わせたり、豪華すぎる客間の一人部屋を持たせたり、それが気まぐれじゃないとでも?」
「代々、山田家に仕える家柄だからって、高校に通っちゃいけないってことはないだろう。知識がないよりあったほうがいい」
「それはそうだけど……」
「まあ、確かに気まぐれだけどな。あいつの顔、見た? 犬みたいじゃね?」
「司佐……」
 司佐は長椅子に寝そべり、目を閉じる。
「コロコロコロコロ……主人に尻尾振ってさ。おまえだってわかるだろ。田舎から出てきたせいもあるだろうけど、圧倒的な身分の差。絶対的な服従……周りの人間に退屈していたところだ。退屈凌ぎにはちょうどいい。大丈夫だよ、親父やじいちゃんだって、年の近いメイドを高校に通わせるなんて美談として取ってくれる」
 退屈凌ぎという言葉に、昭人は司佐の恐ろしさを感じた。
 それを察してか、司佐はクスリと笑う。
「昭人。俺、つくづく昔に生まれてなくてよかったと思うよ」
「え?」
「たとえば俺が中世ヨーロッパの貴族や王族だったらさ、毎日女はべらせて、気に入らないやつみんな、即刻打ち首だなんて言ってたんだろうよ」
「……そうだね」
「昭人……俺を裏切るなよ」
 司佐の言葉に、昭人は吹き出した。
「そんな勇気があるなら、とっくにそうしてるよ」
「ハハ。だな」
「おやすみ、司佐」
「おやすみ……」
 残された司佐は、悲しく微笑んだ。

 昭人が出て行き、一人になったコトハは部屋中を見回した。
 レースの刺繍や品の良いタペストリーなど、メルヘンチックなその部屋は、まるで自分がお姫様にでもなったかのような錯覚を覚える。
「夢みたい……私、頑張ります。早く司佐様に恩返し出来るように……」
 涙を拭きながら、コトハは胸につけられたロケットペンダントを開く。中の写真には、美しい女性が映っていた。