きみたちのゆめ
とてもおいしい。素敵だよ。どんなに褒めても足りないくらいだ。
あれ、もうないのかい?
僕の腹を満たすには少し足りないな。いや、正直言うと腹ペコだ。食いでがない。昔の夢は、違ったな。色鮮やかさは物足りなかったけれど、腹いっぱいにはなった。
時代の違い?たぶん、そうなんだろう。
腹が減った。
どこか、ゆめがたくさんありそうな場所は知らないかい?
海の中?人魚の夢?どうだろう。
学校。昼間の生徒のうたたねの中。
それは、頭が痛くなるんだ。
小さな子供の夢。
純粋すぎる。消化が良すぎる。
何より、食べちゃいけないと言われているんだ。叱られるよ。
”きみのゆめ”を、もっと食べていいって?”きみたちのゆめ”を?
そんなことをしたら。
ああ、でも、”きみたちのゆめ”は本当に素敵だ。
ほら、何といったかな。そう、ケーキ。
甘くてふわふわでしっとりの、少し苦味もあって苺のすっぱい、
そう、そこの”きみのゆめ”に出てくるのに似ているよ。
ああ、素敵だ。
でもね、僕。こんなに食べちゃいけないんだよ。本当は。
だって、夢って、食べたらなくなるものなんだ。
ほんの少しだけ、しか、もらっちゃいけないものなんだ。
”きみたちのゆめ”、こんな風に僕に食べさせたらいけないんだよ。
なくなっちゃうよ。
え、叱られるかって?僕が?
うーん、君は子供でないし。少なくとも、小さな子供ではないね。
多分、ばれない。ばれないよ。
”きみたちのゆめ”、本当に素敵だ。
でも、僕にこんな風に食べさせてはいけないよ。
ほら、夢がなくなった。
ほんの少しだけ、まだ物足りないけど。ごちそうさま。