出張こぼれ話
冬の寒い日、私の前を袈裟を着た一人のお坊さんが歩いていました。
凍った路面を滑らないように雪駄でゆっくりと歩いています。
「あー、檀家回りも大変だなぁ。」
と同情しながら、歩みの遅いお坊さんを追い越そうと彼のすぐ後ろまで来たとき、
突然突風が私たちを襲いました。
お坊さんの袈裟の裾がヒラヒラと寒風にはためいています。
その時、信じられない言葉が、お坊さんの方から聞こえて来ました。
「ああ・・・・玉寒い!」
(え?)
耳を疑いました。
聖職者がなんと言う下品な!と思った時、
「ああ! 玉寒い! 絶えられん!」
そう言うや否や、袂から毛糸の帽子を取り出してすっぽりとその坊主頭にかぶり
ました。
(あ!)
(ああ! 玉寒い! →→→ ああ! 頭寒い!)
・・・・お坊様、罰当たりな私をお許しください。
ああ、神様、罪深き私めをお許しください。アーメン。
祈らずには居られませんでした。