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出張こぼれ話

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出張先の台湾から、関空に戻ってきたときの事です、

一番前の座席だったので、一番先に降りた私は、預けた荷物を取りに向かい
ました。

一人の制服を着たお兄さんが話しかけてきました。

「すみません、ちょっとお時間ありますか?」

税関職員の方のようでした。

「はい、何でしょう?」
と私。

「実は今、麻薬犬のトレーニングをしておりまして、
もしお時間があるようでしたらご協力をお願いしたいのですが。」

まぁ、札幌行きの乗り継ぎ飛行機はまだ時間があるので、

「いいですよ、それで何をすればいいんですか?」

というと、お兄さんは手に持っているガラスの入れ物を見せて、

「この中には、麻薬の匂いを付けたバンドが入っています。匂いといっても、
人間が感じられない程の微量の匂いですが。」

と言いました。

見ると、そのガラス瓶の中には、ピンク色のフェルト地のサポーターの様なもの
が入っておりました。

「これを、ズボンの下の足首に付けて頂いて、そのまま普通に手荷物を待って
いて頂けるだけで結構です。」

なーんだ、簡単。

「分かりました。」

そう言って、お兄さんにサポーターを付けて貰い、私はいつもの様に
ベルトコンベアの前で手荷物を待っていました。

すると、麻薬犬を連れたさっきのお兄さんが、ベルトコンベアーを流れる荷物
や、荷物を待つお客さん達の間を縫って、麻薬犬に「チェック」と指示し、
調べさせています。

麻薬犬が私の所にやって来ました。

私は、そ知らぬ顔で荷物を持っていましたが、麻薬犬は私の手の匂いをクンクン
と嗅ぎ、それからやや暫くの間、私の股間をクンクンと嗅ぎ、行ってしまい
ました。

(あれ?)

もう一回りすると、再び私の所にやってきて、また色々な部分の匂いを嗅ぎ
まくります。

(加齢臭きつすぎて、分からんかな?)

そう思った矢先、麻薬犬はトレーナーのお兄さんに、
「こいつが犯人や」というシグナルを送りました。

(吠えたりはしません。後ろ向きだったので、どんなシグナルを送ったのかは
見れませんでしたが、何か合図したのです。)

すると、お兄さんは、

「よーし、グッジョブ、よーし、よーし」

と言って、私の前で麻薬犬をほめまくり、なでまくり・・・・

他のお客さんは皆、その犬と私の顔を交互に見て、

「こいつ、なんかやりおった。」

という顔で、眉間に皺を寄せ、私の顔をにらみつけるのでした。

(うへー。こいつはたまらん!)

一通り、犬を褒め終わったお兄さんがやっと、

「すみません、これは訓練です。ご協力ありがとうございました。」

と私に頭を下げたので、それで私の疑いは晴れました。

「これ、記念品です。また、よろしくお願いします。」

といって、大阪関税のボールペンをくれました。

・・・・もう二度とやるか!(−−〆)

作品名:出張こぼれ話 作家名:ohmysky