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フォーゲットミーナット ブルー【第7話】

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【第7話】

喉の渇きを覚えて、私は目を開けた。どうやらいつの間にか眠っていたようだ。飲み残したチューハイの缶を手に取り、ぐいっと口に流し込む。アルコールは半分くらい抜けていて、不味かった。
時計を見ると、午前10時。結衣がそろそろ帰ってくる時間だ。私はソファから身を起こし、外の様子をうかがった。
「あ……」
一台の車が、目の前に停まった。功一君のものだ。私はうれしくなって、そわそわした。
助手席から結衣が降りてくる。功一君も車から出てきた。

「結衣………さみしかったよ」

私はキュッと唇をかみしめた。そのとき。
結衣と功一君は名残惜しそうに、お互いを抱きしめ合った。しばらく時間が経ち、二人はゆっくりと顔を見合わせる。

「あ……あ………」

心臓が早鐘を打つ。見たくない。だけど、体が硬直して動かない。
結衣と功一君は、やがて唇を重ね合わせた。

「やだ……」

ポロポロと涙がこぼれおちる。限界。そう思った。
私はテーブルに置いていた、ピルケースと携帯電話をつかんだ。

「もういい。何も見たくない」

涙がとめどなく流れ落ちて、喉が締め付けられるように痛んだ。私は部屋を飛び出した。
「うぅ……くっ………」

涙をぬぐうこともせず、私はマンションの屋上へ走った。
結衣………結衣………。私の大好きな結衣………。
うまく呼吸ができない。涙で視界がにじみ、何度か階段から落ちそうになった。そのたびに手すりをつかみ、体勢を整えた。
結衣。私はあなたを愛しています。愛しています。
ようやくたどり着いた屋上の入り口。ドアノブを掴む。
ドアを開いたら、風がひゅっと頬を撫でた。そのまま倒れるように、座り込む。

「はぁ……はぁ………」

苦しい。とても苦しい。
涙がポタポタと地面に跡をつけた。

「結衣………」

私は携帯電話を取り出す。メールが届いていた。結衣からだ。

“いまどこ? 買い物にでも行ってるの?”

返信する気力はない。しばらくメールを見つめていると、電話がかかってきた。私は少しためらいがちに通話ボタンを押す。

『恵里??』
「……………………………」
『いまどこなの? ねぇ、聞えてる??』
「……結衣」
『え?』
「…………愛してます」
『えっ? なに? なんて言ったの??』
「……あいしてます……」

私は声を出さずに、口をパクパクと動かした。そして、電話を切った。電源も切った。
ゆっくりと立ち上がる。心は少しだけ、穏やかになった。だけど涙は止まらない。

「結衣……結衣………」

空を見上げる。雲ひとつない青空。気持ちがいい。
あなたにもらった幸せ、消えることなく胸の中に残っているよ。
私は一歩前へ踏み出した。
結衣、心から愛しています。


【続く】