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アジアへGo!

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朝、7時半にフロントに集合、江蘇省、張家港にある客先まで、約2時間のドライブです。
私の後輩、あだ名を「ぼくちん」としておきますが、彼が10分送れてフロントにやってきました。

「おい、遅いぞ!」と私。
「だって、昨日遅かったから・・」とぼくちん。

(あのねぇ、ぼくちん、遅かったのは君だけじゃないよぉ。
おじさんも遅かったんだぞぉ。)

とりあえず、今説教してる暇が無いので、チャーターした運転手付のバンに乗り込みました。

お客さんの前で居眠りをされてはかなわないので、一言言っておきました。

「おい、お客さんの前では常に緊張している様に。居眠りなんかしたら、お前のEチケット破り捨てて、置いて帰るからな! 覚えておけ」

自分で言いながらなんだかおかしくなりました。
「お客さんの前では常に緊張している様に」と言ったのは
韓国でお世話になったチョーさんの上司、アンさんの台詞であり、「覚えておけ」は私の鬼軍曹で教育係だったゴリさんの台詞だったのです。

(あー、こうして勉強させてもらって、今俺はここでこうして仕事が出来ているんだなぁ。)
としみじみ感じました。

「はいはい、そんなガキみたいな事はしませんよぉ。」
とぼくちん。

(やりそうだから言っているのだよ、ぼくちん)

その後、走る車の中で、足りない睡眠時間を補うべく爆睡。
高速を走ること2時間、客先の工場へ到着です。

さあ、打ち合わせ開始!
初めての海外のお客様に緊張気味のぼくちんは、手をぶるぶる震わせながら、名詞を逆に渡し、私をはらはらさせましたが、それほど大きな失敗をせず、黙々と私とお客さんが話す内容をパソコンに書き込んで行きました。
さすがプログラマー、見事なブラインドタッチで、話すのと
同じスピードで書き込んでいます。

(ぼくちん! やれば出来んじゃん!!)

昼休みを挟んで、打ち合わせは午後4時に終了しました。
ぼくちんが打ち込んだ日本語の議事録を私が英語に書きなおし、印刷してから、全員がサインをして完了。
お客さんの工場を出たのが午後5時、上出来です。

(これなら上海に戻って、愛しの上海蟹ちゃんを食べられるぞ・・ヒヒヒ)
思わずよだれが口いっぱいに溜まってしまいました。

「おい、これから上海へ戻って、上海蟹を食いに行くぞ!」
私が上機嫌でそういうと、あろう事かぼくちんは、

「えー、僕、蟹ってあまり好きじゃないんですよねー。北京ダックにしましょうよ、先輩!」

(この野郎! 俺がどんな思いで此処へ来たか分かってるのか! 愛しの上海蟹ちゃんに会う為に企画したこの旅行、いや、出張を台無しにする気か!)

私は深呼吸をして呼吸を整え、諭すようにいいました。
「お前ねぇ、上海に行って、北京ダックは無いでしょう。北京ダックは北京で食え。やっぱり上海で本場の上海蟹を食っておかないと営業トーク増えないからね。」

「えー?、じゃあ、先輩、おごってくれるんですよねぇ。」
とぼくちん。

「しょうがねぇなぁ、わかったよ、おごってやるから、ね?
行こ? ね? ね?」
しつこく食い下がる私。

「分かりました、行きましょう。」
しょうがない、行ってやるかという顔のぼくちん。

「そうこなくっちゃ、ありがとう!」
笑顔満面の私。

(ん?)
なんでこうなんの?
立場が完全に逆転してんじゃん!!

こうして、私達の上海蟹体験ツアーはスタートしたのです。

待っててね。上海蟹ちゃん。もうすぐ君に会いに行くよ!

(つづく)

作品名:アジアへGo! 作家名:ohmysky