人魚の恋
そんな彼は当然ながら、不実な男である。
端から女であれば声をかける。
可愛ければ男にでも。
そこに恋愛感情は無いと言う。
素敵なものを見たら、声にださずにはいられない。
当然のように彼は言う。
私は毎日泣いていた。
嫌いになれないと泣いた。
大嫌いと罵っても
消えてほしいと叫んでも。
「君の流した涙は、そのまま瞳を溶かしてしまいそうだね。」
彼は瞼に唇を落とす。
涙は決して止まらない。
彼の笑顔が好き。
彼の声が好き。
彼のその嘘くさい台詞が好きで。
大嫌い。
彼が知っているかどうかなんて関係ないと
私は言う。
「人魚姫の恋だわ。」
「素敵だね」
と彼は言う。
泡になって消えるのは
――あなただと思うわ。
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その口数と引き換えに人の恋まで落ちてきて。