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―１０年後、リラの花の咲く頃に、この場所でお逢いしましょう。
　愛する少女が消える間際、残したひとことを胸に抱きながら、
孤独な日々を送る朝鮮国王徳宗。
　王が暮らす世界は莉彩を失ってからというもの、色褪せたまま
だ。
　一方、愛する男と別れ、ひとり現代へと還った莉彩は、せめて
徳宗との想い出を偲ぶことのできる場所として、北海道の大学へ
と進学する。大学卒業後、ＯＬとなった莉彩は久しぶりに実家の
ある町へと戻った。娘の帰宅に歓ぶ両親だが、その裏には、いつ
また娘が突然、行方不明にならないかという不安が透けて見えた。
　〝あの日〟から十年めがやってくる。莉彩はその日、１０年前に
朝鮮王朝時代へとタイムトリップした場所へと行った。
　あの男との〝約束〟どおり、リラの花の咲く季節にリラの花束を
持って－。