なかにし君と、たけうち君。
中西くんと竹内くん(ぼくと君とその他大勢)
「あー…だー…うー……」
学校の昼休み、ひたすら唸っている彼はぼくの友人。
彼と出会った時…中学に入ったばかりの入学式でほんの少しの事情から初対面で絶叫かましてしまった人間(つまりぼく)と仲良くなってくれた彼の名前は中西くん。
そんな彼が枯れた花のごとく萎れている原因は彼の手元を見れば一目瞭然。
中西くんの愛読書。“週刊!!The☆ゆれすぽ”。
正直、中西くん以外で見てる人を知りません。
「………また駄目だったんですか?」
「そうなんだよ……今回はしっかりと目撃証言に信憑性があったから今度こそは!って期待してたのに…」
「なんでしたっけ?自殺した女の人が丑の刻参りしてる神社でしたっけ?」
「見るどころか有名な釘打ち音さえきこえなかった…」
中西くんは大のオカルト好きです。心霊現象大好きです。
自分で心霊スポットに赴いてみたり、儀式してみたり、怪しい古書片手に式神的な物を作ってみたりエトセトラ…。
「最低でも絶対は聞えるって噂のすすり泣きと恨みごとも聞えなかった」
今だ遭遇率0ですが。
「うるさかったんじゃないですか?」
誰に、とは言いません。
『うるさいもうるさい。しくしくしくと辛気臭いことをつらつらと語っとるだけよ』
『だいたいあんなとこで頑張るんなら直接行けって感じだよ』
『頑張る方向間違えてるのよねぇ、現代っ子って』
『きぃきぃ』
「まあ、すすり泣きって案外安眠妨害ですしね。恨みつらみも興味無い人からすればうるさいですよね」
「いや、そのうるさいのを聞きに行ったの!俺は!」
「そうですよねぇ」
『主様はまた新しいとこを探し取るんだがいい場所知らんか小童』
「行っても同じ結果だと思うけど」
「ん?竹内、何か言った?」
「ううん。今度は、どこ行くか決めました?」
「検討中!」
中西くんは毎回収穫が無くて死ぬほど落ち込みますが、しばらくするとめげずに次のチャレンジをしようと試みます。
『しかし、主様は心霊すぽっとを探す前にやることがあろうて』
『そもそも根本的な問題とか』
中西くんは知りません。
ぼくが超霊媒体質であることを。
「(そうだなぁ…)」
ほんとうは中西くんが巡って来た場所の中には俗に言う”本当の”心霊スポットもあったことを。
「俺は諦めんぞー!!」
ただ中西くんの霊的な、俗に言う除霊・浄礼的事に特化している力のせいで一般的な例は自動的に祓われるか逃げていることを。
『そうだ竹内。主様が好奇心でやった一人こっくりで何故か召喚してしまった狐が帰れず途方にくれておるのだ何とかしてやってくれんか』
中西くんがいままでやった儀式や式神製作は実は全部成功していることを。
『きぃーき?』
そんな得意環境、才能に恵まれながらも見鬼・眼通力といった肝心の力の才能が絶望的にない見えない・聞こえない・触れないトリプルZ 体質だということを。
「竹内!次こそ俺は心霊現象を目の当たりにしてみせるぞ!!」
いい加減、教えてやるべきか否か非常に迷いながらも、次に期待する中西くんのイキイキした笑顔に今日も何も言えないのです。
作品名:なかにし君と、たけうち君。 作家名:727