パンがなければ
俺も当然参戦する。その戦争に参加しないと、俺は学校が終わるころには倒れてしまう。
いざ、戦地へ……俺は昼食のパンを入手する為に戦地へ向かう。
戦場はもうごった返していた。
パンを皆に供給する購買のおばさんたちの前で様々なパンを生徒教職員入り乱れて取り合っている。
「皆さん、順番にお願いします。お釣りはなるべくないようにしてくださいね」
順番なんか守っちゃいねえ。中学生も高校生に対する配慮も高校生も先生に対する配慮まるでなし。
これを逃したら外へいけない俺たちは最悪水分で凌ぐ羽目になる。
それだけは勘弁なので戦場へアタック。
やっぱ腹減るからがっつり腹にたまるものが食べたい例えばカレーパンとかハンバーガーとかBLTサンドとかそういうの。
っつーかもう殆どパン残ってないじゃんか……残っているのは何か良く分からない菓子パンみたいのばっかだ。
残っているのは俺の好きなピロシキこれ俺大好きなんだよ、いただき!
しかし敵は手ごわい。最後の二つのピロシキの一つは取られた。しかも中学生に。
「この!」
最後のピロシキ、手が届け!
「あ、これちょうだいねぇん」
ぐぁぁぁあこんなところで美術のオカマ先生こと三川先生にピロシキ取られた。しかもクリームいっぱいの特性クリームパンまで。
そのクリームパンもほしかったのに。
しょうがない、あんこクリームパン買うか。
「あんこクリームパン!」
そう叫んだ時だった。
「私はこのあんこクリームパンを一つ買います」
うわぁぁあなんで今度はジョージ先生邪魔するのさ。しかもなんであんこクリームパン?
イギリス人だったら普通スコーンとかじゃないか。
「りんごパイにしよう、りんごパイ」
りんごパイも大きくてうまいからそれにしよう。今度こそ、今度こそ!
「おばちゃん、このりんごパイまけてくれへん?」
「ここ東京だからまけられませんわ」
「しゃーない、これくだはい」
なんで大阪からの転校生の山西も邪魔するんだよ。
もう残っているのは……ら、ラスクと、あと何、よくわかんないパン。
「Anko is very sweet! I like Anko!」
「私も好きです。あんことクリーム混ざっているととてもおいしいです」
既に戦場から脱して英語で話すオカマ先生こと三川先生と日本語で頑張って話しているジョージ先生。
ああもうなんで、それ俺だったのに、なんであなたたちの分になっているんだよもうよく分からない。
大分戦場は落ち着いてきたが、残っているのはラスクと、あと菓子パン何個か。
「どれにしますか」
すっごい明るい声でおばさんは聞いてくるけど、もうここに俺の欲しいパンはない。
「あ、すみません」
とりあえず戦場から一旦というか退却。
うわ、パン入手しそこねた。どうしよう。
ええと確かフランスのというか本当はオーストリア人だけどまあ一般的にフランス人として認識されているルイ十六世の王妃マリー・アントワネットはたしかこう言っていた。
「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃないの」
実際にマリー・アントワネットが言っていたかどうかは怪しいけど、怪しいけど、そうだ。
ここは日本、米所。コシヒカリササニシキあきたこまちそれに塩も美味い日本、大日本、大和。
パンがなければ米を食べればいいんだ。
ということで売店へダッシュ。
結構残っているよいるよおにぎりおにぎりおにぎりわっしょい!
ちょっとネタは古いかもしれないがおにぎりをささっとゲットして……ちなみにカルビとシーチキンと昆布。レジへ行ってあっさりとゲット。
やっぱり日本人なら米を食べるべきだよな。
うん、米最高! 日本最高! 大日本万歳! だが戦争は反対!
将来農業でもやろうか。農学部入ってみるか。
でも、俺、数学ダメなんだ。
サインとかコサインとかタンジェントとか意味不明。
三角関数なにそれおいしいのっていう状態だ。
あ、次俺の好きな世界史。
今日は中国か。中国も米文化だ。
やっぱ、米最高だ!
それから俺は当分パン戦争に巻き込まれることはほとんどなかった。
米、うまい。日本、いい国だ。大日本万歳! しかし戦争は反対だ!