ここにはもういないあなたに
遠く置き去りにしていくもののなかで、何を一番きれいと思いますか
この世のなかで、何を一番尊いと思いますか
どんなものを見てみたいと思っていましたか
あなたに聴いてもらいたいものが、ここにはたくさんあります
あなたに考えてもらいたいことが、たくさんに
何か素晴らしい、そうと呟くに足るものに出会うと、
あなたのことを考えます
こうしたものに出会っていれば、
あなたはそれをどんなに美しいものに残したかと思うのです
たしかに、そう、わたしはあなたのことを知らない
あなたがあれだけ大事にしていた、あなたの国の言葉もわかりません
わたしはあなたの苦しみも、微笑みも、怒りさえも推し量れない
知っているのは、あまりに明らかなあなたの優しさばかり
そして後の世に悲しく書かれた言葉だけ
あなたは、どんなものを、どれだけ愛していたのだろう
ただ、わたしはどんな感情の混じりけもなしに、
心底からあなたの残したものを幸せに思います
あなたの、もう二度と甦ることはない音楽の調べ、
様々な人々がどんなに手を尽くしても、
永久に再現することの叶わぬ思想と生命の、その抜け殻のくり返し。
あなたの優しい願いを耳にするつど、
わたしは生きていることを、純粋に歓ぶことが出来るのです
花束の代わりに
ここにはもういないあなたに
作品名:ここにはもういないあなたに 作家名:青褪めた