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pierrot

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―血飛沫が舞う 。そこらじゅうから痛みに呻く声が響き、
それすらもやがて、こと切れて、物言わぬただの肉塊と化してゆく。

まさに地獄絵図と言うに相応しい、この惨状を作り上げた張本人は

・・・・笑っていた。
無邪気に、哀しそうに、楽しそうに、ただ、狂った様に笑い続けていた。

彼の名はもうない。彼が自分自身の死をすてたから、

彼は人であった、生き物であった頃の生涯を棄てたから。

彼は何処にでもいるような、極々普通の青年だった。
普通の家に産まれ、普通に育ち、普通に学び、
そしておそらく、普通にその生涯をとじたのだろう。

だが、実際にそうはならなかった。

彼の住んでいた村が数日前、盗賊に襲撃されたのだ。

普段ならば盗賊といえど、人は人、あちらとしても、
同じ人を殺したい等と思って無い訳であり
食料さえ渡せば、襲って来ないのだが、

生憎、その頭が、この村に怨みを持っていたのだ。
後は想像出来るだろう。


答えは単純明快。




― 虐殺 だ

次々と人が倒れていった。さほど大きな村でもないため
全て、知った顔だった。田畑と一緒に人も燃やされ、その中には、
今しがた、挨拶を交わした者もいた。

普通であった彼は

鼻をつく異臭、

炎の燃える音、

もはや顔の原型だなど微塵もない死体の積み上げられた山、

そのどれもが耐えきれず、
胃の中のものを吐き出すのがやっとだった。

やがて彼の両親が立ち上がり、盗賊に向かって行く。
息子を守るただ、それだけのために、
たとえその先に死しかないとわかっていても。



しかし、息子もまた、親を喪うことを恐れた。
故にに願ったのだ、死ぬことのない最強の力を、
ふと、先ほどの光景を思いだす。

―弔われることもなく、顔をぐちゃぐちゃにされた、村の人達、
苦悶に満ちた声で呻きながら、炎に包まれ、死んでいった人もいた。

恐くて恐くて仕方がなかった、そしてだからこそ奴は現れたのだろう。

「ふむ、久方ぶりだなこちらの世界は。」

突然、そいつは現れた、しかし青年は怯えながらも必死に頼んだ。

「助けて。」

「なかなか切羽詰まってるようだな、いいだろう貴様に力をくれてやる。」

―代償は後払いだ。

最後の一言は頭に直接響いたが、
彼はそれを気にせずに両親を、村の人達を助けに行く

結果的に言えば、彼は村を守った。
見事、盗賊を打ち倒し、村を守ったのだ。
しかしそれは同時に、彼が初めて人を殺したと言うことでもあり、

彼は助けた村の人達から化け物と、罵倒された。
唯一の救いは、両親だけは、自分達の息子を否定しなかったことだが、



不幸は続いた。彼の両親が公開処刑されたのである。
化け物を庇った重罪人として、

彼は泣いた。その骸の前で、
それが両親を喪ったことに対するものか、
最後の最後まで、信じ続けてくれたことに、
感謝しているのかは分からない。

やがて彼にも、死刑の順番が回ってきた。

絞首台の上で、彼は呟く様に奴に代償を告げた。

「俺は、・・・死を失おう。」

この時点で、彼はもはや修復不可能なほど、壊れていたのだろう。











この日、一つの村が世界からきえた。
〈改ページ〉
作品名:pierrot 作家名:piece