リモートシック
誰でも一度は経験がある事だろう。例えそれが心から望んでいない結果だったとしても、望んでいた結果であるとしても何故か違和感が募る。そう、心にぽっかりと穴が空いたようなそんな、感覚が。
何処か遠くの方から警鐘が聞こえる。
「次の問い4を門司、…おい、門司継人?」
担任の声に目を覚ました。自分が当てられている事に気がついた為に慌てて立ち上がると机の角に膝をぶつけ、豪快な音が響く。
「お前まさか居眠りしてたんじゃないだろうな。…ったく、ちっとは受験生っていう自覚持とうよ。ほらそこ、自分は頭良いから大丈夫なんて思うな。そういう調子こいてる奴程当日焦って失敗するんだよ」
膝をぶつけた時にクスクス笑っていた生徒達は先生に睨まれ、しゅんと萎れた野菜のように俯いた。
「はい、授業再開するよ」
季節は秋。受験に向け緊張がクライマックスへと突入した中学3年生の132名。その中にいる平凡な少年・門司継人はそっと窓の景色に一点の曇りを見つけた。