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ぼくらのひみつきち

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1、 二人の手紙

手紙を背景にナレーション
俊平 「正ちゃんへ。元気ですか。正ちゃんが引っ越してもう半年たつけれど、やっぱり寂しいです。一番の心残りは秘密基地のこと。今年の夏休みに完成させる予定だったけど、出来なかったね。また、いつか遊べるかな。それじゃあ、また。」
正太 「俊ちゃんへ。手紙ありがとう。僕も、俊ちゃんと会えなくなってまだ寂しいです。妹の夢子も、ヒメちゃんと会えなくて寂しいと言っています。秘密基地、残念だったね。でも、嬉しいお知らせがあるんだ。ずっと前、夢子と近所を探検していて、いいものを見つけました。それで、夢子と二人で少しずつ秘密基地を造っていたんだ。場所はまだ秘密。今度教えてあげるね。俊ちゃんが持っている僕らの旗、いつか飾ろうね。ぼくらの秘密基地に。」
俊平 「正ちゃんへ。秘密基地のこと、すごく驚いたけど、とても嬉しいです。完成したら、絶対に遊びに行くからね。僕らの旗、大切に持っているよ。」
カメラズームアウト。俊平からの手紙が机に置かれている。広げられた手紙の横で手紙を書く正太。再び手紙のアップ。
正太 「嬉しいお知らせです。とうとうぼくらの秘密基地が完成しました。地図を一緒に送ります。今度、俊ちゃんとヒメちゃんの暇な日を――」
途中で手紙がゆっくりと燃え始める(イメージ)
誰か 「火事だ!」
炎に包まれる部屋、家。サイレンの音。
正太 「ぼくらの秘密基地が完成するのを、楽しみにしています」
声と共に、焼け落ちた家、火事の新聞記事、そして葬式の場面に。

2、 正太の一家の葬式

葬式の場面。多くの人が集っている。並ぶ一家の遺影。
弔問客A 「なんで、こんなこと…」
弔問客B 「放火だって…怖いな…」
さざめきあう弔問客。泣いている者もいる。
母親にしがみつき、泣きじゃくる姫乃。
その中で俊平はじっと正太の遺影を見つめている。
正太との思い出のフラッシュバック。指きりの場面がジワジワと炎に呑まれていく。その後ろからタイトルが現れる。


「ぼくらのひみつきち」


俊平 「約束しよう。いつか、ぼくらのひみつきちを造ることを。」
暗転。電車のホーンの音。

3、 駅の改札 朝

改札から出てくる俊平と姫乃。物珍しそうに周りを見回す。
俊平 「着いたね。」
姫乃 「うん。」
俊平の手には、手紙が握られている。

4、 回想1

葬式から帰って来た俊平の一家。姫乃はまだ泣いている。
無言で自分の部屋に戻る俊平。学習机の一番上の引き出しを開ける。中には正太からの手紙が入っている。
その中から一番新しい手紙を取り出す俊平。
机に頬杖を突いて手紙を眺めて呟く。
俊平 「正ちゃん…秘密基地、ぼくらの秘密基地を造ってくれるって、教えてくれるって、約束したのに…」
ノックの音。俊平が振り向くと、姫乃が立っている。目が赤い。
俊平 「どうした?」
姫乃 「これ。」
姫乃、ピンクの封筒を差し出す。差出人に、「夢子」の文字。
俊平 「これって」
姫乃 「ユメちゃんから来てたの。最後のお手紙。」
俊平 「いつ来たの?」
姫乃 「火事の、前の日。」
俊平 「読んでいいの?」
頷く姫乃。手紙を開ける俊平。
俊平 「秘密基地の場所を教えるね?この手紙は…なんで、姫乃が?」
姫乃 「お兄ちゃんには、内緒だよって。私に、秘密で教えてくれるって。」
手紙に書かれた地図。駅から、正太の家への道。その途中に赤丸がある。
俊平 「秘密基地への、地図?」
頷く姫乃。
俊平 「ありがとう。」
姫乃 「…造りたいの。私、秘密基地。」
俊平 「……」
俊平、姫乃の頭をぽんぽんと撫でる。
手紙を受け取り、部屋から出て行く姫乃。
一人になる俊平。少しの間立ち尽くし、それから洋服ダンスに歩み寄り、一番下の引き出しを開ける。
引き出しの奥から、白いTシャツを取り出す。
広げたTシャツには、マジックで「ぼくらのひみつきち」の文字。
Tシャツを見つめながら、再び机に向かう俊平。
俊平 「正ちゃん、旗、ちゃんと持ってるよ。秘密基地、この旗を飾って完成させようって、言ったよね。僕らの、秘密基地…」
決心を秘めた表情。強く、正太からの手紙を握り締める。
俊平 「行くよ、正ちゃん、ユメちゃん。僕らの秘密基地に。」
再び改札。

5、 道 朝

地図を見ながら歩いている。適度な田舎。
俊平 「結構遠いね。大丈夫?」
姫乃 「大丈夫。」
俊平 「ユメちゃんの地図、ちょっと分かりにくいね。」
姫乃 「次の角を曲がるって。」
俊平 「あ、本当だ。曲がったら…もう近いみたいだね。」
歩く兄妹。地図から目を上げる。目線の先には森のような自然空間がある。
姫乃 「森。」
俊平 「本当だ…地図の赤い丸、ここだね。」
姫乃 「うん。」
俊平 「ここから地図、ないけど…行く?」
姫乃 「行く。」
俊平 「そうだね。」
頷きあう兄妹。森の中へ入っていく。

6、 森 昼

盛んな虫の声。
俊平 「どこなんだろうね。ユメちゃんが地図を書いてないってことは…」
姫乃 「ユメちゃんでも、迷子にならない。」
俊平 「うん、僕も、そう思う。」
姫乃 「…ずうっと前に。」
俊平 「ん?正ちゃんたちが引っ越す前?」
姫乃 「みんなで、ここと似てる所に遊びに来た。」
俊平 「ああ――」

7、 回想2:森林公園

遊びに来た森林公園で、かくれんぼをしている四人。姫乃が鬼。大きな木の方を向いて目隠しをしている。
姫乃「 もういいかい?」
くるりと振り返り、三人を探し始める。
程なくして、姫乃は俊平、正太を見つける。
正太 「ヒメちゃんは、見つけるのが上手だね。すごいよね。」
俊平 「姫乃が鬼だと、すぐ見つかっちゃうんだもんな。」
嬉しそうな姫乃。だがふと不安そうな顔になる。
姫乃 「ユメちゃん…」
俊平 「見つからないの?」
頷く姫乃。
正太 「夢子はすぐ遠くに行って、すぐ迷子になるんだよ。ちょっと待ってて。見つけてくるからさ。」
そう言って走っていく正太。不安そうに見送る二人。
俊平 「僕たちも、探しに行った方がいいのかな。」
姫乃 「でも、正太くん、待ってて、って。」
俊平 「…」
待つ二人。しばらく経って、正太が夢子と共に戻ってくる。笑いながら手を振る正太。
姫乃 「ユメちゃん!」
夢子 「…ごめんなさい。」
俊平 「良かった…でも、どうやって…?」
正太 「夢子を見つけるのは簡単だよ。だってさ、夢子になったつもりで考えればいいんだから。」
正太の満面の笑顔。

8、 森2:探索 昼

姫乃 「正太くんは、ユメちゃんがどこにいても、ちゃんと見つけるんだよ。」
俊平 「考えよう、正ちゃんと、ユメちゃんになったつもりで。そしたら、きっとみつけられる。」
俊平、しっかりと正太からの手紙を握り締める。姫乃も隣で夢子からの手紙をじっと見つめる。
俊平 「正ちゃんになったつもりで。」
姫乃 「ユメちゃんになったつもりで。」
森の中に、正太と夢子の二人が歩いている幻影。それが俊平と姫乃に重なる。
作品名:ぼくらのひみつきち 作家名:雪崩