桜【詩集2】
願い
夢の翼をください
遙かな空を駆ける夢の翼を
窓から見える青い四角形
それだけが私の空
私の足は大地を踏むことがない
白くて狭い小部屋だけが私の世界
四角い空から降り注ぐ陽の光と
窓の向こうから流れてくる風の匂いが
季節の移ろいを教えてくれる
夜は星空から降り注ぐ月明かり
満ちてまた欠けゆく月が
時の移ろいを教えてくれる
春はひらひらと舞い飛ぶ蝶が
夏は蝉の声が
秋の宵にはすゞやかな虫の音が
冬には静かに降り積む雪が
はしゃぐ子供たちの声
道路を行き交う車の音
落ち葉を集めるほうきの音
やがて何もかもがひっそりと息を潜め
風の吹きすぎる音だけが響く季節が訪れる
人々は忙しげに
楽しげに廊下を行き交い
鈴の音と共にひとときの祭りを迎え
やがて明るくも厳粛な新春を迎える
神さま
どうか翼を下さい
この小さな世界から私を解き放つ翼を
この手で触れたい
この目で広い世界を見たい
それだけが私の願いです