桜【詩集2】
桜
白昼の喧噪を逃れ
真白き満月の元、暗き夜空に静かに燃ゆる薄紅の命の炎
一年に一度限りの聖なる宴
舞う雪のごとくはらはらと散りゆく
白き火の粉さながらに
過ぎゆく春との別れを惜しみしか
いつかの約束を君は覚えているか?
戦争が終わったら
またこの桜の木の下で会おうと
あの日を覚えているか?
約束はついに果たされることはなく
今も時だけが過ぎてゆく
君はいずこの空に散りしか
風に散りゆく桜花のごとき
はかなく短き人生の最後の時を
君はいかに過ごせしか
あの夜と変わらぬこの白き月を
君も最後に見たのだろうか
暁の光と共に
海の彼方へと飛び立った君も
月日はすべて遠い彼方
時はただ過ぎゆく