桜【詩集2】
桜(その2)
満開の桜の散る花びらの向こうに
お前が見える
あの日の姿のままに
かっちりと、しかし粋に着こなした軍服で
小脇に帽子を抱え、
ちょっとふざけて俺に敬礼して見せた
くだらない事を言いあっては笑ったり、はしゃいだり、
些細なことに夢中になった日々
季節が過ぎても変わることなく、
そんな風に過ごすうちに
自然に歳を取っていくのだと、
無邪気に信じていたあの頃
全ては突然断ち切られ、俺とお前は敵同士になった
くだらない日常に
ささやかな楽しみを抱きながら
何とはなしに人生を過ごし
白くなった頭と、皺だらけの顔をして縁側で向かい合い
「歳を取ったな」「いや、お前こそ」
そんなくだらない事を言い合いながら、二人で酒を酌み交わす
やがてそんな日が訪れるのだと信じて疑わなかったあの日
そんな愛すべき、くだらない人生は永遠に終わった
満開の桜は、今もあの日と少しも変わらないのに