桜【詩集2】
遠い日
幾千の幾万の夜を越えて
思い出すあの夜
おまえは笑っていたのか?
それとも泣いていたのか?
強がりで無口なおまえ
無表情なその仮面の下には
繊細でめくるめく虹のような感情を閉じこめて
誰も知らなくても
俺は知っている
おまえの目にきらめくシャボン玉のように淡い光
おまえがほんの少し目を細めたとき
おまえがほんのわずかに頬を赤らめたとき
おまえが微かに顔を曇らせて目を伏せたとき
おまえが俺から目をそらすとき
おまえが真っ直ぐに俺を見つめたとき
人には見せないおまえの感情が激しく揺れ動いている瞬間を
俺は知っている
俺だけが
…今も
今はいないおまえ
遠い日々
時の彼方