誤差
僕は北を向いている。
真正面にいる君が、私は南を向いている、と言った。
僕の隣には僕と同じ方向を向いた友人がいる。
君の隣には君と同じ方向を向いた他人がいる。
僕は言った。「僕は北を向いている。」
君は言った。「私は南を向いている。」
友人は言った。「俺は北を向いている。」
他人は言った。「私は北を向いている。」
あの他人だけが変だと僕は考える。
もしかしたら僕らが変なのかともう一人の僕は考える。
反対を向いているのではと他人の隣にいる君は考える。
違う方向を向いているのだと友人は考える。
僕らは尋ねた。「あなたの向いているのはどちら?」
他人は答えた。「それなら君らの向いているのはどちらかな?」
僕には友人がどんな顔をしているのかわからない。
どころか友人の向いている方向もわからない。
本当に友人は北を向いているのか?
本当に僕らはこちらを向いていて正解なのか?
僕に確信を与えるのは、君だけだ。