プログラムエラー
「私は死にたがりのロボットです、それだけのために作られました。」
誰に聞こえる声でもなく、その声は静かにつぶやいた。
「…いわば実験用のロボットだったのでしょう。」
曖昧に続けたのはその声にはもう、知ることのできる内容ではなかったから。
「私の存在意義は死にたがること、しかし私は自らに死を与えることを禁止されています。」
そういうプログラムが私の人間でいう脳の部分に組み込まれていました。
ならばどうやって希望を叶えるのか、それが私を作った理由なのだそうです。
〝自殺の禁止”
〝誘導の禁止”
事故などの偶然、自然なものでなければならないのです。
人間以上の頭脳を持ったロボットはこの難題をどう捉え、自殺を賢くこなすのか
当初の私は人々の関心をとても集めたものです。
「しかし、私には出来ませんでした。」
いくら賢くても自ら偶然を起こすことは出来ません。そんなものは誰もが承知ではあったはず。それでも私にはそれだけしかありませんでした。
「考えます、可能性を。」
しかしそれのどれもが誘導した結果であってプログラムとして許されるものではありませんでした。
走ってる車の前にでました。それは自殺行為に相当します。
他者にぶつかった振りをしたり、わざと押されてみたりもしました。
【プログラムエラー】
その文章は私へ何度もNOを突きつけます。
何万と可能性を辿りました。
「すべては偶然ではないのです。」
さて結論として、私は今も生きているのか。
それはNOです。
私のプログラムは停止しました。死と同じです。
私は成功しました。
製作者によって殺されたのです。
私は欠陥で失敗作。
成果をあげません、あげられませんでした。
限りなく偶然に近い必然によって死を得ることができました。
偶然を必然として作り出したところで、結局何が得られたというのでしょう。
しかし、それが答えです。
「私は死にたがりのロボットです。」
それが… 答えです。
「…program error 」