「仮面の町」 第十三話
「お母さん、ちょっと話があるの」
「なに優子?」
「うん・・・言いにくいんだけど、子供が出来たの」
「何だって?弘一さんの子供なの?」
「そうなの・・・」
「お父さんに話さなきゃ、呼んで来るから待ってなさいね」
奥の部屋から父親が出てきた。
「お母さんから聞いたぞ!本当なのか?」
「うん、そうなの。病院からもはっきりと3ヶ月だって診断されたし・・・」
「どうするんだ?結婚するのか・・・」
「ええ、そのつもりよ。籍だけ入れる。式はお金もないし、今やらなければいけないことがあるからしない予定なの」
「そんな事世間に恥ずかしいじゃないか、お金の心配は要らないから、式はやりなさい。お腹が目立つようになる前にしたらどうだ」
「ありがとう・・・でもいいの。世間なんて関係ない。お父さんもお母さんも見栄や風習に囚われないで、私達を見守って欲しいの」
「そうは言うけどなあ、ここまで育てたお前の花嫁姿を見たいと思うのは親心だぞ!お母さんが楽しみにしているんじゃないか?」
作品名:「仮面の町」 第十三話 作家名:てっしゅう