小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
けんちん汁
けんちん汁
novelistID. 37087
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

屁い子

INDEX|1ページ/1ページ|

 
お腹を壊した。
私は緊張するとすぐお腹を壊す。今日だって皆の前に立つだけで、緊張して。
お腹がぐるぐるとなる。痛い。痛さで目の前がチカチカする。
足元も遊園地でコーヒーカップに乗った後みたいにふらふらする。
あんな爽快感みたいなスリルはないけど。
とにかくお腹が痛い。

「どうかしたの?」

仲良しの女の子が心配そうにしながら目では「早く終わらせろよ」と睨んでる。
ごめんね、と謝りたいけど、お腹が痛いの。
名前なんて言ったっけ?あれ?
さぁっと何かが下に下がって顔が冷たくなっていく。
すっと片手でお腹を抱えてよくなーれと唱えてみた。
けど、お腹は「んなこと知らねーよ」とばかりにぐるぐるを増す。

「・・・早く読みなさい」

先生もイライラしながら私の読むのを待っている。
先生が段々、鬼に見えてくる。真っ赤な真っ赤な鬼ヶ島にいる鬼だ。
そうしたらさしずめ、私は桃太郎なんだけど、お腹が痛い桃太郎なんてすぐにやられちゃう。
教科書も、なんだか、金棒に見えてきた。
片手の教科書が震える。片手で抱えるお腹も痛い。

「ぁ・・・・」

もう、限界。






小五の冬、私はクラスメイトの前で大きな屁を出した。
それからの私の渾名が「屁い子」になると、その時の私は知りもせずに真っ赤な顔をして、
「ごめんなさい・・・」
と、後ろにいた男の子に謝ることしか出来なかった。

それから数年後、私は高校生になった。
もう私の「屁い子」時代を知ってる人間はいない。
あれから私も変わった。簡単にはお腹が痛くならない。
どうだ、これでもうこわくない。そういう想いで高一の春を迎えた。
桜が咲き乱れて、清々しい晴れ間が覗く中、入口にいた女の子が言っていた。
「そう言えば、小学校の時にね、屁こいた子がいてさ~」
「へー、名前は?」
「忘れたよ~・・・あ、けど、これだけは」覚えてるよ。


屁い子!って渾名だったな」




お腹が痛くなってきた。
作品名:屁い子 作家名:けんちん汁