「仮面の町」 第十二話
「告訴するって言うことなのね。裁判所じゃなく本署に」
「そうだよ。話が通らなかったら、裁判所に行くと脅すよ。そうすると明るみに出るから山崎さんの進退は危うくなるけど、それは最終手段だから警部も解ってくれるだろう」
「弘一の身に危険は起こらないの?」
「何が起こるって思うんだい?」
「たとえば・・・久能に頼まれた裏の人たちに襲われるとかよ」
「それこそこの時期に自殺行為だよ。まあ殺されてしまったら口封じにはなるだろうけどね・・・」
「いやよ!そんな事、いくら正義の為って言ってもいやよ!」
「そんな事にはならないから・・・ボクだって周りに気をつけて行動するから、大丈夫だよ」
「あなた一人の身じゃないからね・・・」
「どういうこと?」
「もう二ヶ月来ないの・・・あの時のことで妊娠したみたい」
「何だって!子供が出来たって言うのかい?」
「うん・・・検査してもらわないとはっきりとは言えないけど、確かだと思うわ。気分が時々悪くなるし、今まで毎月きちんとあったことだから」
作品名:「仮面の町」 第十二話 作家名:てっしゅう