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ぜんの男

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人々に善を説こうとした男がいた
男は前科持ちで
前非を悔いあらため
前頭葉が熱くなるほどに
全身全霊をうちこんで
悟りを開いたつもりだった

善 ゼン ぜんぜんぜんぜん 
男は善を連呼したが 全然伝わらない
唖然とした男は 何かが違うのだと思った
どこが違うのだろう 前後かいや全体か
これは前途多難なことだと悟った

男は考えたあげく詩を前に置いてみた
詩前 しぜん 詩善 自然 
自然な感じになれば聞いてくれるかな…と
だが
詩は前座のようなもので 状況に変化は無かった
そこで男は座って善を説こうと考えた
座禅 ざぜん 座善  

依然として 男の善は説得力を持たず
憮然として男は
膳に向かい善後策を考える

人々に善を説こうとした男は今
善は説くものでは無いと悟り
薬膳料理屋を営んでいる

作品名:ぜんの男 作家名:伊達梁川