切り取られた日付けの町
気を失い沈んで行った所がどこなのか田村には解らなかった。
その町は見たことのある町であった様な気がした。
田村は酒の看板を見るとその店に入ることにした。
「・・・・・・」
30代の女は口を開けてはいるが声は聞こえては来なかった。
多分『いらっしゃいませ』と言っているのだろうと田村は感じた。
カウンターに腰をかけウイスキーの水割りを頼んだ。
いつもの口当たりではなかった。
何か潮っぽい感じだ。
「換えてくれないか」
田村は新しいグラスを口にしたが、やはり前のものと同じであった。
「ここの水は美味くないね」
「・・・・・・」
『そんなこと有りません普通ですよ』
と言っているらしい。
まわりを見ると誰もが楽しそうに酒を飲んでいる。
ただその人たちからは声は聞こえなかった。
何故声が聞こえないのだろうかと田村は考えた。
この部屋を満たしている空気と思いこんでいたものが、空気のように抵抗のない海水である事が解った。
そのために鼓膜が圧迫されていたのかも知れなかった。
1時間もすると、田村は音が聞こえるようになった。
その町は見たことのある町であった様な気がした。
田村は酒の看板を見るとその店に入ることにした。
「・・・・・・」
30代の女は口を開けてはいるが声は聞こえては来なかった。
多分『いらっしゃいませ』と言っているのだろうと田村は感じた。
カウンターに腰をかけウイスキーの水割りを頼んだ。
いつもの口当たりではなかった。
何か潮っぽい感じだ。
「換えてくれないか」
田村は新しいグラスを口にしたが、やはり前のものと同じであった。
「ここの水は美味くないね」
「・・・・・・」
『そんなこと有りません普通ですよ』
と言っているらしい。
まわりを見ると誰もが楽しそうに酒を飲んでいる。
ただその人たちからは声は聞こえなかった。
何故声が聞こえないのだろうかと田村は考えた。
この部屋を満たしている空気と思いこんでいたものが、空気のように抵抗のない海水である事が解った。
そのために鼓膜が圧迫されていたのかも知れなかった。
1時間もすると、田村は音が聞こえるようになった。
作品名:切り取られた日付けの町 作家名:吉葉ひろし