名前のない唄
卵にひびが入ったと思うと、神々しい光を放ち、ねぐらを吹き飛ばした。
ねぐらのあった場所にはもうずいぶん前に見たと思われるあの小鳥が立っていた。
「ありがとう。約束を守ってくれたんだね。」
「久しぶりだね!小さくなった?」
「君が大きくなったのさ。」
「ふぅん・・・。小鳥くんはどうして命を宿すことができるの?」
「私はこの世界の修復の使命を持った者だ。」
「???」
小鳥は樹に息を吹きかけた。すると樹が見る見るうちに生長し、大きな樹木になった。
そして樹の枝を折り取ると、地面に刺し立てた。5本ばかり立てると、瞳を閉じ、静かに唄いはじめた。
その唄はなんとも言えない、ふしぎな音色だった。
すると地面に刺さった枝が人の形になり、小さな子供が5人立っていた。
「わぁ、お友達だぁ!」
「この子達は君が育てるんだ。」
「わかった。」
「君がこれをやるんだ。できるね?」
「うん。」
「さて、私は次の世界に行くことにしよう。後は任せたよ。君がこの世界の主になるんだ。」
そういうと小鳥ははるかかなたに飛び去ってしまった。
幼い、いや、物心のつく年頃になった、その少年は、その小鳥をずっと見守った。
名前のない唄を唄いながら。
- 完 -