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愛憎渦巻く世界にて

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第18章 バンコウ



 輝く朝日に照らされ、シャルルは目を覚ます。青空に浮かぶ太陽から届く強烈な日光が、シャルルの顔を照らしあげており、
「ウッ」
目を開けたシャルルは、その強烈な日光に目をくらましていた。そして、日光に目が慣れてくると、自分やすぐ近くにいる仲間たちを取り囲んでいる状況に、ただ驚いていた……。仲間たちが既に目を覚ましているということもわかったが、現在の状況で、朝のあいさつをしている余裕は無い。

 シャルルたちは、島のジャングルの中の開けた場所にいた。ただそれだけなら、いいのだが、それだけでは済まず、自分たちが縄で拘束されている点と、それをした殺気だった人々がいるという点が追加される……。その他に追加される点といえば、この開けた場所には、シャルルたちを取り囲んでいる人々の粗末な村と高いやぐらがあるということと、盛大なたき火がすぐそばで燃えているということぐらいだ……。少なくとも、この未開の孤島に住んでいる村の人々が、シャルルたちの歓迎パーティを開いてくれたというわけではないことぐらいは、誰にだってわかることであった……。
 縄でしっかり拘束されて座らされており、武器や手荷物は少し離れた場所に無造作に積まれていた。もしかしたら、ウィリアムの横にいるメアリーが、隠しナイフを、どこかにまだ持っているかもしれなかったが、それを知っているのは持ち主だけだ。
 そんな状況に置かれているということだけでも、シャルルたちを怖がらせるには十分だったわけだが、彼らをさらに怖がらせることとなった要因は、その人々が、明らかに違う人種だったからだった……。その人々は黒人で、自分たちと同じ白人としか交流をしたことが無いシャルルたちを、不気味な気分にさせていた。この世界は、現代社会ではないので、このような反応は当然のことだと言えた。おそらく、彼らは、日本人たち黄色人種を初めて見たときもこのような反応をすることだろう……。
 彼らが、スーツを着込んでいたりしていたら、すぐに少しずつ落ち着けたかもしれないが、その人々は未開の部族で、つまり、シャルルたち文明人からすれば、野蛮人の集団である蛮族であった……。しかも、その数は、100人以上であった……。

「スカェヮヲゥワンチャン!!!」
作者が適当に入力したとしか思えないレベルの言語を、蛮族である彼らは喋っている。どうやら、この蛮族は、ヨソモノを歓迎したくないと思っているようだ。そうでなければ、縄で縛ったり、殺気をぶつけたりはしてこないだろう。
「失せろ!!! 野蛮人が!!!」
ゲルマニアは、そう大声で怒鳴った。彼女の大声と表情に、先頭にいた蛮族の数人が一歩下がった。このままゲルマニアに、ヒステリックな大声をあげさせておけば、蛮族はみんな、泥船にでも乗って、この島から出ていくかもしれない。

「ソイチサテルワンチャン!!!」

 しかし、そうは問屋がおろさなかったようで、そのけたたましい大声の後、蛮族の群集の中から1人の老婆が出てきた。派手な服装と偉そうな態度から、その老婆が、この蛮族のリーダーであるということはすぐにわかった。その老婆は、シャルルたちのすぐ目の前まで来ると、舐め回すようにシャルルたちの面々を上から眺めながら、左右を行き来していた……。言い忘れたが、マリアンヌはもう泣いていた……。しかし、この状況では、シャルルにも彼女を慰めていられる余裕は無かった。
 リーダーである老婆の容姿は、ぐしゃぐしゃの白髪頭で、色気などとうの昔に消え失せた後期高齢者であった。態度はでかいが、よぼよぼであることは隠し切れず、もしも階段から転落すれば、そのまま昇天しそうだ。
「ツキシルルンワンチャン!!! スサフルユワンチャン!!! ツスヘレニゥワンチャン!!!」
老婆が、一気にそうまくしたてると、群集の中から数人の若い男たちが出てきて、ゲルマニアの部下であった騎士を取り囲んだ。そして、縄で拘束されたままの彼を、無理やり立ち上がらせた。それから、盛大なたき火のすぐ近くに置いてある岩に向かって、無理やり歩かせた。間違いなく、あのたき火の中に騎士を放りこむつもりだ……。
「ひぃ!!!」
その騎士は情けない声をあげ、その場に座りこもうとしたが、数人の若い男たちの力に抗うのは、ゲルマニアに鍛えられた騎士であっても無理な話であった……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん