探す少女
彼女は花を探しています。
彼女は一輪だけ花を持っていました
それは昔むかし人間が彼女にくれたものです。
彼女は人間に作られた機械なのです
でも自分の意思があります。感情があります。
金属製の人間なのです。
彼女は今日も探しています
この世界を彷徨っています。
彼女は花を咲かせたいのです
種は数え切れないほど持っていました
でもどこに植えても芽がでません
きっと場所が悪いのだろうと彼女は旅を始めました。
いつまでもどこまでも続く世界で旅を始めました。
この世界に終わりはありません
どこまでも続いています。
彼女はいつになったら気づくのでしょうか?
この世界は土が悪いのです
水ももう少なくなってきました
かれた土地では植物は育たないのです
それでも彼女は旅を続けます
いたるところに種を植えます。
意味がないのかもしれないと自覚し始めても
それでも植えます。
この世界があの人がくれた花でいっぱいになるようにと、
彼女はこの世界が好きでした。
過去の話です。
今は好きではありません
だってこの世界にはもうあの人がいません。
美しい花もありません
目の前に広がるのは砂漠と少しの水だけ
彼女は旅を続けます
彼女は旅を続けます
ある日唐突に彼女の旅は終わりを告げました
彼女を動かすエネルギーがなくなってしまったのです
彼女は1953877年302日5時間23秒旅を続けました
その旅もここで終わりです
誰も彼女のことをほめてはくれません
だってこの世界で彼女は一人きりです。
彼女はオイルの涙を流しました
「あの花が、溢れる美しい世界で生きたかった」
数億年後のことです
彼女が生きた世界、星は再び人類が誕生しました。
人類は自分たちが恵まれた星に生まれたのだと喜びました。
だってその世界は一面中花が溢れていたのだから。