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風の音

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木々のざわめきが増した

それはさながら何かの知らせのように私の耳に心地よく響いた


何処に行けばいいのだろう。

途方も無い道
御父様は言ったのだ

風の声をお聞き


もう少ない葉がカラカラと音たてて私の足元を転がっていく
茶色くなった、役目を終えた葉。

それらは土に還り、また自然界へと巡るだろう


すっかり冬になった。

すっかり冬になっていた。


私は何一つ進まないまま、時を過ごしていた。


道は平坦でも無ければ一本道でもない

かと言って私を拒む壁だとか障害物は存在しなかった


選べば通れる道だった。


選んで通る道だった。


私はそれらを選択して、この道まで辿りついたのであった。


「聞こえますか?」



私には聞こえないようです。


風はそんな私を置いていくように、



カラカラと音を立てて飛んでいった葉は


もうどこにも見当たりません。


私はあの葉が欲しかったのです。

道を探すあまり、忘れていたのです。


葉はもう見当たりません。


葉はもう



見当たりません。

作品名:風の音 作家名:氷室夕