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終焉への恋愛 Ⅱ

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携帯の目覚まし音で麗子の一日が始まる

一先ずキッチンに立ってコーヒーを淹れる準備
コーヒーメーカーのスイッチを入れる
カップに湯を注ぎ、熱いコーヒーをすする時を思い描きながら
洗面所へ
現実の顔を見つめる
気持ちを引き締めるひととき
若くはない 
けれど瞳は大きく輝いている

手早く洗顔を済ませ、髪を整え
眉を引き、瞼に淡くシャドウを重ねる
淡いベージュ、バニラの香りのルージュでお終い
寝室に戻りながら今日着る衣装を考える

衣装などと勘違いを起こしてしまう表現だけれど
「衣装ねぇ」
イメージを重ねてみるがいつものスタイルに戻ってしまう
茶と黒と微かな赤のデフォルメされた花柄プリーツのスカートに
ハイネックの黒いセーター

55才を過ぎた頃から首周りが気になりだした
衰えが表面化するのは首からなのか と少しがっかりした
目立たなくしよう とついハイネックを選んでしまう

ジャケットは淡いベージュの一枚仕立てのテーラードカラー
襟元にテディのブローチ
目とお腹に小さなジルコンがキラキラとささやかに輝く

キッチンからコーヒーの香りが立ち登ってくる


一昨日から一晩、昨日の夕方まで晃と過ごした時間が蘇る
いつ越すのか話し合ってみるけれど、麗子の仕事をどうするか
麗子自身決めかねている

韓国を本拠地にしている友人、金田弘子が出している雑貨店を
任されて10年
輸入雑貨が多いけれど単価の大きい物を置いている
一点ものばかりなのでお洒落なミセスに人気の店だ

アルバイトの瞳の販売センスが良いのか
的を得たアドバイスに主婦たちは殆ど勧められるまま買っていく
そして、身に着けて、褒められた と喜んで報告にくる

瞳もその報告を嬉しく聞いて
「良かったぁ~」と言う仕草は主婦を更に嬉しくさせる 
そんな魅力を持った娘である
今は大学院生になって瞳も進路を具体的にしなくてはならない時を迎えていた
かれこれ6年もの間、麗子をサポートしてくれている

こんな娘が居たら、と思わせるほど気が合う
瞳も麗子を慕っていた

5年前、背のスラリとした紳士が店内に何の拘りもなく入ってきた
プレゼントでも捜しに来たのか と暫く接客をしないでそっとしておいた
「あら、伯父様!」
奥のストックルームから商品を抱えて出てきた瞳の声に麗子は瞳を見返した

「やぁ 瞳ちゃん 夕飯でもどうかなと思って厚かましくここまで来たよ」

「あら 嬉しい 伯父様 丁度、伯父様はお元気かしら と思っていたところでした」

「所用が有ってこの近くまで来たんだよ 
アルバイト始めたって聞いてたから、思いついてお邪魔したよ」

「伯父様 このお店の店長さん 麗子さんをご紹介します
麗子さん 私の父の弟にあたる伯父です」

「まぁ 初めまして 瞳さんの伯父様でしたか 大変失礼いたしました
お声もおかけしないで、ごめんなさい」

「いえ ほっておいて頂いて良かったですよ 
瞳がお世話になってありがとうございます」

「そうだ、宜しかったら麗子さんも夕飯御一緒にいかがですか」

「まぁ 伯父様グッドアイデア 麗子さん ご一緒してください」

軽やかな伯父と姪の会話が心地よく、3人の食事はきっと楽しいだろう
と、厚かましくないかしら と言う懸念より
「あら 宜しいんでしょうか ご一緒させてください」
と言ってしまっていた

あれから5年の月日が経っている

作品名:終焉への恋愛 Ⅱ 作家名:ぱーる