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人を食べた怪獣の話

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怪獣のことがとても好きな女の子
怪獣になりたいけどなれない悲しい涙を流していた 朝から晩までずっとずっと
怪獣は女の子の隣にいた 朝から晩まで隣にいた
ある日女の子の右目が涙と一緒に溶けて消えた ぽっかり穴の空いた顔で
あなたと一緒ね、と笑った
私も立派な怪獣かしら、

困った怪獣は、目をあげると言った 僕の金色の目玉をあげる
女の子はいらないと首をふる
あなたと一緒にいたいから溶かしたのに、どうしてそんな事を言うの?

怪獣は困ってしまった
女の子と一緒にいたい、けれど、あんなに綺麗な女の子の目玉を溶かしてしまった!
大変だ大変な事をしてしまった!

あわてた怪獣は女の子の顔の右側の穴に入り込んだ
女の子の顔に空いた穴と怪獣の金色の目玉はピッタリとはまった
僕もずっと君といたいから、ここにいていいかい?
怪獣は女の子に尋ねた
女の子は驚いた様子で、でもすぐに笑った

えぇ、もちろんよ。私の右目の居心地はどうかしら、
とても良いよ。それより、君の右目は美しいかな、醜い目にはなっていないかな
いいえ、いいえ、とても美しいわ
私の右目は世界一の色をしているの、

女の子は笑った
右目はとても幸せそうに
左目もとても幸せそうに、涙を流した

私は、とても幸せよ 私はとてもとても幸せよ

それから、女の子はどんどん冷たくなっていった
僕は 寒くないかい 寒くないかい とずっとずっと朝から晩まで問うていて
女の子は 大丈夫よ、 と言うのだけど
それは嘘だと知っていた
僕もずっと寒いのだから

女の子の身体はまるで海だった
冷たく、暗く、底がない
寂しい寂しい海だった
だから僕はこう言った

僕が全部飲みこんであげる

女の子は何も言わなかった ただその身体を抱いているだけだった

女の子の海を僕はどんどん、どんどん飲みこんだ
僕の身体はどんどん、どんどん大きくなった
女の子の身体は暖かくなって
僕の身体も暖かい

大丈夫かい、もう寒くはないかい
あなたの、おかげで暖かいわ、
私はもう、ずっと寂しくないのよ

僕は嬉しくて笑った
女の子の右目は笑っていた
左目はポロポロと涙をこぼした

もう、頭も足のつま先も冷たい所なんて一つもなかった
女の子の寂しさは僕が全部飲みこんで
女の子はもう寒くはない
身体を強く抱くことはもうない

女の子はようやく暖かくなったのだ

僕は満足だった 

ありがとう、ありがとう
女の子は言った
ふと、冷たさを感じて僕は左側を見た
飲みほしたはずの海が 小さな小さな海があった

最後の一滴だ、
最後の君の寂しさを、僕は飲みこんだ

ありがとう、怪物さん
ありがとう、怪物さん
私はあなたの中にずっといるわ

そう言って女の子は消えてしまった

僕は暖かくなった
女の子の中身が僕でいっぱいになってしまった
僕が女の子を飲みこんでしまったんだ、
全部、

僕の中身は海になった
冷たく、暗く、底がない、

寂しい、寂しい、海だ



女の子は泣き続けていた 朝から晩までずっとずっと
金色の両目を覆い隠して
ずっとずっと泣き続けた




作品名:人を食べた怪獣の話 作家名:もtoo