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王様きどり

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「この世で一番偉い人ってだーれだ!」
 無邪気におれの友達がそう言ってきたので、仕方なく、友達思いのおれは答えてやることにした。しかし、これはすぐに答えられない。なかなか難しい問題だ。さすがおれの友達。やるじゃないか。
 偉い人。なんか分からないけど、とにかくすごい人たちのことだ。ぱっと思い浮かんだのは校長先生だった。だって、先生たちのボスだし。次に浮かんだのは、父の会社の上司だった。父さんの話を聞くに、「大して実力も無いのに偉そうなことを言う」人らしい。偉い人が偉そうなことを言うのは当たり前だから、父さんの上司は偉くないのかもしれない。
 いやいや待て。確か、教科書に出てくる人たちもすごい人たちだって、先生は言ってたぞ。じゃあ、織田信長とかも偉い人なんだろうか。それなら、音楽室の後ろに飾ってある顔の人たちも、何だかすごいらしい。沢山曲を作ったって。でも、曲を作るぐらい、おれにだってできる。
 あ!そういえば、暴力はいけないって母さんも先生も言ってたから、武将はだめだ。戦争って沢山人が死ぬし、やっちゃいけないんだって言ってた。てことは、武将って悪い奴ばっかりじゃん。今まで気づかなかった。次の社会の時間、顔にらくがきしとこう。
 じゃあ、偉い人って?なかなか難しいな。よし、どんな人が偉いのか、ちょっとそこの視点から考えてみよう。うん、おれって、頭いい。
 偉い人っていうのは、沢山の人から尊敬されてて、皆に好かれてる。なんかヒーローみたいだな。それで、すごいことをした人で、すっごく頭がいい。
 そこで思いついたのは、“だいとうりょう”と“そうり”だった。王様でもいいけど、今はあんまり“どくさい”はだめだっていってたから、なんか王様はだめっぽい。でも、“だいとうりょう”と“そうり”も、お金をむだ使いしてるってこないだ父さん言ってたし、やっぱり偉くないかな。むだ使いはだめだもんな、もったいない。
 おれっていろんなこと知ってるな。さすがおれ。こないだのテストは全部百点だったし、先生にもすごいね、偉いね、ってほめられた。あれ、もしかしておれって、すごい?
 さっき考えてた偉い人の条件を思い出してみた。ヒーローみたいで、すごい頭がいい人だったな、確か。でもおれはそれだけじゃない。友達思いだし、先生の言いつけも守るし、いじめられてる奴がいたら守ってやるし、皆に優しいし、親こうこうだ。そうか、おれって、偉い人よりすごい奴だったんだ。
 おれの答えは決まった。ちなみに、友達から質問されてそんなに経ってないんだ、実は。おれって頭いいし!早く考えられるんだ。
「分かったぜ。世界で一番偉いのは、このおれだ!」
「ブッブー!残念でしたー違いまーす!」
 腹の立つ奴だ。にやにや笑いやがって。だったらおれより、すごい奴なんてどこにいるんだよ。おれは友達をにらんだ。
「じゃあ誰なんだよ。言ってみろよ、お前が答えを知ってるんならな!」
「正解は、オレの母ちゃんでしたー」
 え!?マジで!?
作品名:王様きどり 作家名:こたつ