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千本桜の夜

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「う~ん…はぁ…」
弥朱(みあか)は、学校に居残ってやっていた宿題をやり終えた両手を上にして大きく伸びと深呼吸をした。
一人空を仰ぐ。
夕焼けがさっきまで薄ピンク色に染まっていた校庭の桜をオレンジ色へと色を変えさせていた。
5時30分
弥朱は、自分の机のうえに散らばった各教科の宿題のプリントをさっと片付けて、それらを革でできたスクールバッグに入れた。
高校2年、弥朱は本当は自分の親友である真衣(さなえ)と一緒に勉強をやって帰る約束をしていたのだが、4時間目の途中、急に熱を出してそのまま早退してしまった。
……つまらない…。
帰る支度はしたが、まだ家に帰るようなノリにもなれなかった弥朱は、教室からでると、誰もいないであろう図書室へとむかった。
「おぉ、杉浦まだ残っていたのか」
弥朱が職員室を通り過ぎるとたまたま自分の担任教師、風間 幸久(かざま ゆきと)という先生にをかけてきた。
「はい、まだ帰る気になれないんで…。」
弥朱がそう言うと
「そうか、なるべく早く帰るんだぞ」
と風間先生は言って別れた。

図書室についた弥朱はさっそく誰もいない仲一人で自分の読みたい本を探し始めた。
「ん~…なにかおもしろそうな本ないかなぁ…ん?」
弥朱が、いろいろとたくさんの本を見ていると一冊の風呂い年期がはいった本を見つけた。
こんな本、あっただろうか?
弥朱は本が大好きなので確かに図書室にはよく来る。
だが、こんな古い本を見たのははじめてだ。
弥朱はその本が気になりだして、1ページずつ、ペラペラとページをめくりはじめて最後に表紙をみた。
千本桜の舞姫
題名は歴史もののようである。
「こんな本あったんだ」
弥朱はそう独り言を言うと早速1ページめくったその瞬間
「え?」
ピカァァァ…
普通である本が急に光り始めると、弥朱はその光に包まれてゆく。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

「…。…っ…たぁ…」
弥朱は、しばらくしてから頭を抑えつつ、顔を上へとあげた。
「うそ…」
弥朱が見たその風景は、江戸時代の風景である。
ここがどこであるのか、自分はどうしたのか、とかいう問題ではない。
弥朱が、今いるこの世界、いや時代は幕府に入っているであろうよくテレビでも見られる時代劇そのものの風景が広がっていた。
「…なんなの…?なんで…」
弥朱が立ち上がろうとした瞬間、
「おい!!待て!」
遠くで男性の声が聞こえた。
「…?」
作品名:千本桜の夜 作家名:黒猫