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そして海には辿り着かなかった

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轟音は擦り切れるダイヴ


ドキドキしてるのがわかるかい?ワクワクしているみんなに聞いてるんだ。
今から起こるすべてのことに興奮をおぼえている。
時計の針がその時を示すんだ。そして金髪坊主は高く飛び上がった。
少しぬるいビールで乾杯をしたらターンテーブルで回ってる『危険』に針を下ろす番だ。
楽しくて仕方ないって、そんなこと言わなくてもお前の顔を見ていればすぐにわかる。
ビールの苦みに少ししかめっ面をしてあの娘に視線をやる。
言葉が蘇る。ただ、頷いたのを思い出す。

「人生はクソだよ」
頷いた時にそのまま時間を止められた。
世界はハイスピードなのに。クソみたいな人生・・・
生きる意味も考えたことないようなそんなインチキ占い師に言われたくないね。
クソならクソで考えればいい。どうしてそいつがクソなのか。
ターンテーブルの『危険』が答えを知ってると思うかい?
そして考えてみるんだ。
あの娘から視線を外すと今度は数人が飛び跳ねている。
わめき声が聞こえる。
音量を上げても何も変わらない。
さあ、まだ興奮は続いている。
みんなワクワクし続けている。

何もないくせにそうやって格好キメる奴が嫌いだ。
いや、嫌いというか、もっと楽しくやればいいじゃないかって、そんな風に思うだけ。
でもそれならどうしてあの娘のことが好きなんだろう。
どうしてユキのことを好きになったんだろう。

『人生はクソだ』だってたいていのパンクやロック気取りの奴が好むような言葉を吐いたあの娘を。

スパンクは酔いが回る頭でそんなことを考えていた。

「ファァァッックッ!!」
轟音混じりにそんな雄叫びが耳に飛び込んでスパンクは我に返る。
われに返らない方がよかったかもしれないけど。

ビールが入ったカップを渦巻く客席に投げ込みスパンクはダイブする。
金髪坊主がその後を追う。

祖末な狭っ苦しいステージ。簡素で照明なんてほとんどないステージが少し明るくなる。すえたニオイが漂う。
歓声。
スパンクお目当てのバンドの登場。ハウリングが絡み合った。
しかしスパンクはそれどころじゃない。
金髪坊主に肩を掴まれそのまま例の青いバンから降り立った狂暴な猿達に囲まれていた。
餌付けしてるわけじゃない。
ステージから遠く離れフロアの隅の方で残虐な、退屈しのぎのオモチャにされていた。
スパンクの仲間達はまるで今日のノルマを達成するかの如くステージに上がってはダイブする、を繰り返している。
もちろんユキも最前列で踊り狂っている。
一瞬そんな満面の笑みがスパンクの目に飛び込み血反吐吐いてうずくまる。