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バレンタインデイ・キッス

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プロローグ
春、初めて見たときからあなたに恋をした。
夏、小麦色の肌をしたあなたに胸が高まる。
秋、体育祭、あんなに走るの早かったのね。
冬、私はあなたに思いを伝えることにした。


そう、今日はバレンタイン・・・


2月14日。
それは意中の相手に思いを伝える日。
時に砕け、
どこかで実る、
青春の1ページと呼ぶにふさわしい、
大事な大事な日。


私は今日、ヒロト君に告白します。


[1]
ヒロト君と私は同じクラスの高校1年生。
入学式の日、
ヒロト君を見て私のキモチは一気に貫かれた。
恥ずかしながら一目惚れをしてしまった。
桜が淡い雪のように舞う並木道の下、
クラス分けの掲示板を眺めるヒロト君を見て
かっこいい・・・
そう素直に思ってしまった。
178センチ、華奢な体に淡い栗色のミディアムヘア。
そんなアニメに出てきそうなほどベタなイケメンに私は惚れてしまった。
そんな彼はクラスでも人気者。
いつも友達に囲まれ、何をやってもクラスの中心。
私の知る限りではすでに何度か告白されたらしいが、未だに彼女はいないようだ。
こんなリア充のリア充を友達も数えるしかいない、話しかけられても返事ぐらいしか
できないような非リアな私はずっと好きでいる。
どうせ私なんか相手にされない、きっと無駄だ。
実際にヒロト君とは掃除当番の時に、
「おーーーい。逢沢ーーー。箒貸してーーーー。」
と、話しかけられたことしかない。
なのに今日私はヒロト君に告白しようとしている。
彼女がいないとは聞いている。
でも、それはただ理想が高いからほんとに美人な人としかつきあう気がないとか?
それともすでに付き合ってないだけで何人も仲良くしている子がいるとか?
こんな暗い、内気、影的存在な存在な私がヒロト君に告白しても無駄なだけってわかってる。
でも、今日ぐらいのイベントにあやからないと私には思いを伝えるだけの度胸がない。
ぜったいに今日ヒロト君に思いを伝えるんだ。


[2]
なぜたろう、
「今日、放課後裏門横の倉庫裏に来てもらえるかな?」
私の申し出はあっさりと承諾してくれた。
裏門横の倉庫裏。
裏裏と何度も言うのもくどいなんとも微妙な場所。
しかし、この場所はこんな学校の中でも滅多に人の来ない穴場スポット。
ほとんでの生徒は正門から下校するし、この倉庫は構内の大掃除の時にしか
使用しないから教師も滅多に来ないのである。
まして、こんな一大イベントとなると、
教室、
体育館裏、
後者裏、
屋上、
なんかはもう先約でいっぱいだろう。
今時下駄箱に手紙というのもどうかとは思うが、あり得ない話ではない。
だからこそ絶対に人の知らないところがいいのだ。
そう、この穴場は私しか知らない。


だってここでいつも弁当を食べているのは私しかいないのだから・・・


もうすぐヒロト君との待ち合わせの時間。
言えるだろうか、
伝えられるだろうか、
どう返事をされるだろう、
こんなに胸が苦しくて、はち切れそうで、1秒が長いと思ったことはない。


[3]
彼は来た。
そうあっさり来てしまった。
時間に遅れて、私をじらすこともなく、がっかりさせた後にいきなり現れて
どっきりもさせない。
ただ、時間通りに約束の場所に来た。

「おー、逢沢ー。」
「お、おーーすすす。じ、時間ぴったりだねぇ。」
「うん、まあ暇だったしね。で、用って何??」
「え!!?」
(この男・・・こんなに日に呼び出される意味わかってないのか??)
「え?って逢沢から呼び出したんじゃん。」
「ま、まあ、そうだけど・・・。」
(ま、ままままさか、鈍感??あんなにモテるくせに、未だに彼女がいないのは
このせいか!!?)
「しかし、今日は寒いなぁー。逢沢、寒くない?」
「う、うん。ちょっと寒いけど、大丈夫。」
「そっか。」
「あ、あのさ・・」
「うん?」
(その「うん?」はズルい・・・・・・・・・・・)
「ヒロト君ってさ・・・・か、彼女とか、いるの??」
(あーーーーーーーーー口から心臓が飛び出るーーーーーーーーーーーーー)
「いないよ?」
「じゃ、じゃあ・・・・好きなひ、人とかは・・・?」
「うーーん・・・いないこともないけど」
!!!!!!!!!!!!!!
「え?」
「だからぁ、何度も言わせんなよ。」
(こ、これは・・・・)
「そ、そーーなんだぁ。」
(ど、どどどどどどどどどどーする?)
「なんだよー。なんか言いたいことがあるなら早く言えよ。」
(え!?これ、フラグ????)
(それとも死亡フラグ????)
(で、でもここまで来たらもうっ!)
「・・・・・き。」
「え?」
「私、ヒロト君が好き。」
「・・・・・・え!?」
(言ってしまったぁぁぁぁ・・・)
(ヤバい、もう戻れないよぉ・・)
言ってしまったものはもう戻らない。
進むところまで来てしまったが、胸が張り裂けそうで、壊れそうで、
とにかくこのまま走って逃げてしまいたかった。




「俺も好きだよ。」

そう、この言葉を聞くまでは・・・


[4]
一瞬、ヒロト君の言った意味がわからなかった。
その次の瞬間、頭が真っ白になった。
(ヒロト君が、私を・・・す・・・き??)
その次の瞬間、私はからかわれているのではないかと思った。
だって彼は、何人にも告白されて、それでも誰とも付き合ってない、
ほんとはこうやって何人もたぶらかしてきたんだ。
そう思ってしまった。
「私のこと・・・が?」
「うん、好きだよ。」
(わけがわからない。)
「な、なんで?」
「なんでって、そんなの理由が必要かよ。」
「でも・・・」
「でもって言っても俺はずっと逢沢のこと見てたよ?」
「えっ・・・・!?」
ますますわけがわからない。
(ヒロト君が私を・・?)
でも、
「で、でも・・・私、男なんだよ?」
「うん。知ってるよ。」
「それでも好きなの?」
「ああ。だって俺女の子に興味ないんだもん。」
「そ、そうなんだ・・・」
(えぇぇ、意外すぎるよ、この展開・・)
(ま、まさか両想い・・・・???)
「俺、結構前から逢沢のこと気になってたんだけどさ、なかなか話す機会とか無くて・・」
「ううん。私も、もっと話したいって思ってたけど、なかなか勇気でなくて・・・」
「じゃあ、これからはずっと一緒にいような。」
「うん。」


2月14日。
この日は私、逢沢颯太の人生ではじめてのキスをした日になった。




エピローグ
春、桜並木の道を二人で歩く。
夏、白い海岸線を二人で走る。
秋、焼けた新芋を二人で齧る。
冬、クリスマス、二人で過す。


作品名:バレンタインデイ・キッス 作家名:mkiron