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繋がらない時間。

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---チッ!まただ---

空しく続くコール音。
俺は、携帯の電源を切り、やや、乱暴に閉じた。

美奈との音信が途絶えてから、もう、一週間が経つ。
それまでは、毎日、定期便でメールが来ていたのに---。

---ホントはね、メールより電話の方が好き。繋がってる感じがするでしょ?---

耳元ではにかみながら呟いた美奈に、俺は、それまで以上に愛しさを感じた。


美奈との出会いは、一年前。
取引先に連れられて行ったクラブ博多座で、俺の隣に座ったのが美奈。
丁度、東京から出張で戻る時、混み合う空港で、他の乗客が倒したスーツケースに、ぶつかり、したたかに左腕をぶつけた夜だった。

痛む左の手首、肘を気にする俺に、

---大丈夫ですか?---
と心配そうにケアしてくれた美奈。

中洲では、単身赴任の男と、バイトの独身ホステスの出会いなんてありふれたもの。

直ぐにメアドと携帯番号を交換。
時々、食事をしたり、カラオケをしたりする仲になるまでには、それ程の時間は必要ない。

俺の好みは偏っていて、所謂、プロっぽいホステスは好みじゃない。

昼間、税理士を目指して勉強中という美奈は、華やかなクラブの中では目立たない存在だが、笑顔が透き通る様に綺麗な所が印象的。
会話も、真面目で前向きな辺りも悪くない。

以来、美奈は、俺にとって、博多で一番気の合うガールフレンドになった。
男も50を目の前にすると、口で言うほど、カラダを求めなくなるもの。
むしろ、定期的に繋がっている時間の方が重要と思えて来る。

---でも、ずっと一緒にはいられないのよね?---

あの夜、別れ際に呟いた一言を残して、美奈は俺との繋がりを絶った。


単身赴任の男と、バイト独身ホステスとの別れ。
これもありふれたものなのだろうか?
作品名:繋がらない時間。 作家名:RSNA